類似品・同巧品でも勝つ方法
昨日、単発のご相談で都内の製造業さんの工場を訪ねました。
武漢ウイルスの状況下ですので、外でのミーティングは久しぶりでした。
商品開発をしているので企画と販路開拓のアドバイスが欲しい、ということだったのですが、プロトタイプを見て首をひねってしまいました。
海外はもちろん、国内でも数社が先行して開発、販売している商品の模倣だったからです。
市場にニーズがあることはわかっているので、単なる商売人ならけっこうでしょう。
しかし、われわれはものづくり派ですから、差別化のできない商品を開発・製造する意味はありません。
やんわりと軌道修正の方法などをアドバイスし、ユニークな商品開発アイデアができたときのネーミングやキャッチコピー、リアルとネット両方の販路開拓手法についてひと通りアドバイスをしました。
基本的に、ヒットしている先行商品を後追いし、少しの改良を乗せて勝つというのは大手企業の手法です。
とはいえ、類似品や模倣品でも、本家を超えて売上を伸ばし、後発なのにデファクトスタンダードになることができないわけではありません。
その方法のひとつは、ネーミングです。
ネーミングが要因となって、先行商品が後出し商品に負けたケースを見てみましょう。
まず、[ぐるなび]と[食べログ]。
先行のぐるなびに対して、後発の食べログが現在はページビューでも会員数でも抜き去ってしまい、勝負がついた状態です。
IT系のサービスでは、先行するものが有利なことは明白ですね。
時代が追いついて来る前に息切れして売却や廃業してしまった例を除けば、ほとんど先行者が勝ちます。
では、なぜ[ぐるなび]は負けたのか。
両者のサービス内容には多少の差異がありますが、明暗を分けたのはそのネーミングです。
「ぐるなび」という響きには外食のイメージがありません。グルメのためのナビゲーターなのですが、「ぐる」と省略したために、ぐるぐるとドライブを楽しむナビ商品の名称になってしまいました。
同様の失敗に、[スポティファイ]があります。
Spotifyは音楽配信サービスなのに、どう聞いても「スポーツ系サービス」の響きですね。
販売しているのにレンタル系サービスにしか聞こえない[メルカリ]も同じ失敗例です。
一方、「食べログ」は上品な響きではありませんが、とにかく「食べ」が入っています。
「メシに行こうよ」「何食べる?」「食べログ、見ようか」
というように、「食べる」から容易に連想が働き、食べログでの検索行動に結びつくのです。
もうひとつの例をあげます。
かつて「食べるラー油」という食品がブームになりました。
このブームをつくった先行者、桃屋の商品ネーミングは、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」というものでした。
桃屋は、ブームの火付け役になりましたが、いざ購入希望者が検索をするときにどんなキーワードを入力していたかというと、「食べるラー油」です。
そのため、検索結果にはズバリ「食べるラー油」とネーミングした、二番手、三番手メーカーの商品も上位に表示されました。
桃屋といえば、[ごはんですよ]などでも知られる、マーケティング巧者です。
それが、ネーミングに凝るあまり、他社を利する結果を招いてしまったのです。
(現行商品パッケージでは、キャップ横に「食べるラー油」と明記)
あるいは、中小農機具メーカーの筑水キャニコムが[草刈機まさお]のネーミングにより、本当に草刈正雄を商品キャラクターに起用したマキタと、市場イメージでは五分以上に渡り合った事例もあります。
仮に後発であっても、ツボにはまる象徴的なネーミング、記憶しやすいネーミングを冠した商品のほうが、カテゴリーを代表するアイテム(デファクトスタンダード)に押し上げられてしまう現象は珍しくありません。
ということで、最初から狙ってすることではありませんが、中小企業が大手や先行企業と戦って勝ち味を見出すためには、ネーミング戦略が役に立つという話です。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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