製造業マーケティングの第1歩
食品や工業など、中小製造業が販路開拓・拡大するために、何を、どのような順番で考えていくべきか、について書きました。
基本のようでいて、気づいていない会社さんも多いことだと思います。ぜひ、最後までお読みください。
すぐれた技術を持ちながら、販路開拓に悩む中小製造業があります。
食品・食品素材加工や、金属・樹脂部品加工、機器製造などをしており、顧客はいるが脱落もあるので将来が心配、というような状況の会社さんです。
その悩みは、おおむね下記のようなものです。
・営業に回りたくても人員が足りず、社長以下、技術者と職人ばかり。
・ウェブサイトは作ったが、自社の特長をうまくアピールできていない。
・試作の依頼は来るが、量産時は海外に発注されてしまう。
・新規開拓できても、結局は見積もりまでで正式発注にならない。
これを、公共支援機関に出入りしている中小企業診断士に相談すると、決まって
「ウェブサイトで販路開拓をすればいいのです」という回答になります。
そして、「高品質に自信あり」「試作品を3日で特急仕上げ」「試作から量産まで一貫受注」のようなキャッチコピーが踊るウェブサイトが完成します。
さて、こうした施策の問題点は2つあります。
(1)インターネット上に競合サイトやページが増えすぎ、もはや過当競争に陥っている
(2)どんなにキレイなウェブサイトをつくっても、「選ばれる理由が」明確にならなければ引き合いは来ない
まず(1)の問題は、基本的にはSEO対策やPPC広告出稿で解決することになります。
しかし、Googleの検索エンジンは人間並みに頭がよくなってしまい、SEO対策のプロの出番がないのです。
つまり、小手先の対策では対策にならず、技術や業界に精通した人が日々、こんこんと良質な記事・コンテンツを追加していく以外に打つ手がなくなってきているのです。
専門家に頼るとすれば、SEO対策やPPC広告に有効なキーワード選定をどう考えたらよいか、くらいなのです。
(2)「選ばれる理由」とは、他社とも比較した上で(この会社に発注すればよいのだ!)と、意思決定してもらえる表現を書くということです。
それは、決してQCDではありません。
(QCD=品質、価格、納期)
国内工場なら高品質で当たり前。それを言うとしても数値化したり、データなどの根拠を提示するなど、群を抜く表現で説得しなければなりません。
価格とは、低価格・低コストですが、価格訴求で勝てるのは中堅・大手企業。
低価格訴求をすれば、必ずその価格をくぐる競合が現れ、血で血を洗うレッドオーシャンで泳ぐことになります。
価格の話をするなら、顧客企業にとっての劇的なコスト削減策を提案し、それを高い価格で売ってください。
中小企業は、個々の仕事できちんと利益を取らなければ体力がつづかないのです。
納期もウリではありません。
10日を1週間にすれば、ライバル社は5日に。3日と言えば2日、24時間にと、これも現場を削る不毛な競争になっていきます。
大切な社員が疲弊して辞めていくだけです。
そして、よくあるのが「自社で一貫生産」。
1社ですべて生産したところで、顧客企業にとってのメリットにはなりません。
近年の災害頻発を見れば、バラバラのサプライ・チェーンを構築したり、「複数工場で生産しています」と言うほうがリスクヘッジのメリットがあるくらいです。
「あなたの会社を選ばずにはいられない理由とは何か」
冒頭の会社さんにとって、これをあぶり出すことこそが、最も必要な初手です。
他社では削れない難切削素材を削れるのか、他社では手に入らない食品素材を添加しやすい形式にして安定供給できるのか、他社が切削加工する部品を一発プレスでできてしまうのか──。
それが明らかになったら、キーワード化、キャッチコピー化するのです。
キーワード化とは、そのウリを求める顧客が検索するワードを知ることです。
キャッチコピー化とは、秒で伝わる明快なメッセージ文に書き上げることです。
ここまでできれば、もう販路開拓の道は8割は成ったも同然です。
ウェブサイトをつくったり、イプロスに登録したりすれば、ズバリの見込み客からメールが来るでしょう。
展示会に出展すれば、ブースでスマホをいじっていても来場者から声がかかるでしょう。
(ウチには、そんなウリのポイントはないよ……)
そんなことは絶対にありません。ウリのない会社なら、「バブル崩壊」「ITバブル崩壊」「リーマンショック」「東日本大震災」のどれかにより、とっくになくなっています。
あなたの会社には、選ばれつづけてきた理由が必ずあるのです。
あるいは、決めたウリでメッセージをつくったのに思ったような反応が取れないこともあるでしょう。
だとしたら、それはウリやキーワードが間違っているのです。
その場合は、もう一度、虚心坦懐に考え直せばいいのです。
マーケティングのプロから見れば、大手企業であってもウリのポイントがズレているケースには枚挙にいとまがありません。
それは、あなた自身が頭から弓削、いいえ湯気を出すくらいに考えなければならないことなのです。
広く浅く勉強している中小企業診断士は、マーケティングのプロではありませんし、営業の現場に精通もしていなければ、技術のことも知りません。
彼らに正解を求めるのは酷なのです。
だから、あなた自身が考えて答えを出すのです。
そして、試してフィードバックを得る。
間違っていたのなら、また考え直す。
その繰り返しの果てにしか、あなたの会社が理想の顧客と出会う場はないのです。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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