自社のキーワードを特定する方法2
キーワードを特定する方法の記事の後編です。下記項目の1から5項までは前編です。
■キーワードをつきとめる手順項目
1 ユーザーの悩み、課題を言葉にする
2 関連キーワードは何があるか調べる
3 本気の検索キーワードをつきとめる
4 競合の狙っているキーワードを知る
5 アクセス解析から想定外のキーワードを拾う
6 ユーザーの使う言葉を意識する
7 マーケティング調査からヒントを得る
8 ネーミング、商標もリストアップする
9 ロングテールのキーワードも拾っておく
10 検索ボリュームのサイズをチェックする
11 YMYLとE-A-Tへの対応を意識する
6 ユーザーの使う言葉を意識する
商品をつくって販売するほうは、当然のことながら専門家、プロです。
使う用語も、専門用語や略称、隠語などであったりします。
しかし、見込み客やユーザーにとってあなたの商品は、いろいろな検討対象のなかの一つの要素でしかなく、長時間をかけての専門学習はできません。
ですので、ウェブで専門用語を使って説明されても「?」となってしまい、文字通り齟齬が生じてしまうのです。
とくに現場で使用される設備や機器類は、直感的に伝わるコミュニケーションを心がけないと、面倒くさがられて他所のわかりやすいところへ流れてしまいます。
<事例> たとえば、支援先のベルトコンベアメーカーのウェブサイトでアクセス解析をしていたときのことです。
検索キーワードのリストのなかに、「バタつき」という初耳の言葉がありました。
支援先企業の人と話していても、一度も出てきたことのない言葉です。
つまり、現場のユーザーが直感的につくり出した言葉なのです。
ベルトコンベアの不具合が起きて、ゴムのベルトが波打ったまま稼働してバタバタしてしまう現象を修理したいユーザーが、焦って検索するキーワードなのです。
そこで、ユーザー目線に合わせて考えるなら、この「バタつき」というキーワードを拾い上げて対策に組み込めば、検索にヒットするのです。
また、カタログや展示会ブースに掲げるキャッチコピーに使えば、気づいた見込み客が自分の体験に結びつけてピンと来てくれるかもしれません。
<事例> 別の支援先企業の事例です。
そこの工場は、これまで切削加工が必要であった部品加工を、調整を重ねてプレス加工で仕上げる技術を持っています。
切削加工はコスト高なので、中国に発注されていたような部品も、その会社の国内工場では中国より安く、早く加工ができるのです。
こうした転換を求めるユーザーに向けてキーワード対策をする場合、「プレス加工+コストダウン」などを軸に考えてしまいがちです。
ところが、ユーザーの立場になって考えてみればわかるのですが、これまで切削加工を発注してきたユーザー担当者は「切削加工+コストダウン」でしか検索しません。
ですから、この場合も「ユーザーの使う言葉」を意識して、切削加工に関連したキーワードを攻めていくことが求められるのです。
7 マーケティング調査からヒントを得る
マーケティング調査を通じて得られたユーザーの視点も参考になります。
デプスインタビューをおこなった場合、意外なユーザー発信のキーワードが見つかることもあります。
ただし、ほとんどのケースでマーケティング調査は役に立たず、使える調査手法は限られている、という趣旨の記事を弓削は書いていますので、こちらからご参照いただき、参考にしてください。
マーケティング調査という場面でなくても、営業スタッフの人は、顧客を訪問したときの会話からヒントを見出すことができます。
ところが、営業の人はウェブマーケティングの担当者ではありませんから、これを聞き流してしまいます。
ですので、マーケティングを担当している人は、ユーザーと密(!?)に接している営業スタッフと、定期的に情報交換をするべきですよね。
弓削も、支援先企業のユーザーさんの態度や意向について理解を深めたいとき、営業スタッフさんに直接インタビューをさせてもらいます。
先月も、今年からご契約になった支援先企業の営業スタッフさん5人に、合計で4時間ほどインタビューをさせてもらいました。
複数人から聞き取ることが肝心で、今回もとても多くの気づきやアイデア、そしてキーワードをもらうことができました。
また、調査という点では、いわゆるスプリット・テストも有効です。
これは、たとえばキャッチコピーのA案とB案とを、ウェブ上でランダムに表示させ、どちらのキャッチコピーが成約や資料請求に結びついたかをテストするもの。
キャッチコピーに使われるキーワードの効き目を知ることができます。
<事例> 支援先の食品会社での事例ですが、スーパーやコンビニ向けの弁当・惣菜をつくっているメーカーでのこと。
マーケティング担当者は、新商品を買った理由や感想を訊きたいが予算も限られているし、顧客である流通サイドに怒られたくもない、と悩んでいました。
以前、出入りしていたマーケティング・コンサルタントは「売場に行って、立って見てろ」と命じたそうなのです。
そこで、私が提案したのはQRコード・キャンペーンでした。
つまり、弁当・惣菜のパッケージの隅っこにQRコードとキャンペーンのお知らせ(総額10万円ていどのプレゼントがもらえる)を入れます。
これさえ流通サイドに許可をもらえば、表示に気づいた人(お金を払って購入したお客様)が、QRコード経由でアンケートに回答してくれるのです。
かかるコストはパッケージの印刷変更代と、プレゼント品代10万円のみ。
これでお客様の気にしているキーワードがわかるのですから、手軽でいいと大評判でした。
8 ネーミング、商標もリストアップする
ネーミングや登録商標ということは、自社(他社)の商品名ということです。
ある商品のカテゴリー名称でキーワードを考えることが多いと思いますが、なかにはカテゴリー名称化した商標というものもあります。
「携帯音楽プレーヤー」ではなく[ウォークマン]、「宅配便」と言わず[宅急便]と指名されるようなものですね。
いまなら、「ビデオ会議」ではなく[zoom]というところでしょうか。
実際には、Google meetを使う場合でも、「zoomにしましょうか?」という言い方をするわけですね。
こうした商標そのものによる検索を「指名検索」と呼びますが、この検索回数は意外に多いとされています。
自社の商標でズバリ検索されてウェブサイトに訪問してもらうことは、なによりSEO上たいへん有利です。
そのため、指名検索されやすいネーミングをするべきなのですが、それはまた別記事で。
つまり、キーワード選定では固有の商品ネーミングも対象となります、ということです。
また、自社内の財産という意味では、ブレーンストーミングも有効です。
人材は、それぞれ得意分野やノウハウを持っていますし、異なる視点を持っている。
この財産を、キーワード選定に生かすのが、ブレストです。
弓削が指導するカンタンなブレスト法は、まさにキーワード視点です。
1点だけご紹介しますが、ブレストに慣れない人が発言に躊躇する一つの要因が「こんなこと言ったらバカにされるのでは」というネガティブ思考です。
これを払拭するために、各自が雑誌を数冊ずつ持ち込み、「雑誌に出ていた」と言いながらキーワードを言い合うというやり方です。
責任はあくまで、今月号の雑誌というわけです。
※ブレストのやり方については拙著「短い言葉を武器にする」をご参照ください。
9 ロングテールのキーワードも拾っておく
検索回数もニーズも大きいキーワードをビッグワードと言います。
これに対して、ニッチなニーズに繋がるスモールキーワードをロングテールと言うことがあります。
ビッグキーワードの対策をしても、過当競争のためになかなか結果が出ないことも多いでしょう。
そこで、マイナーなロングテールのニーズを拾い集め、記述ページを積み重ねることで支持を得ようという作戦です。
あまり使われないキーワードへの対策は怠りがちですから、大手の人海戦術に勝つうえでは一つの戦術となりえます。
絞り込みすぎたキーワードやネガティブキーワード(「安い」ではなく「高くない」、「コンパクト」ではなく「大きすぎない」、「軽い」ではなく「重くない」など)も対応しておきましょう。
また、絞り込むという意味では、リスティング広告を出稿するときに購入するキーワードも2語セットにすると、ぐっと戦いやすくなります。
2語目に組み合わせるキーワードとしては、次のようなタイプの言葉を検討してみてください。
使い方 方法 やり方 コツ 無料情報 限定 格安 送料無料 最新 モニター……
10 検索ボリュームのサイズをチェックする
ビッグワードかスモールワードかを決めるのは、検索回数です。
候補となるキーワードの検索ボリュームを知って、戦術に組み入れたいものです。
そんなときに役立つのが、「あるキーワードが月間で何回検索されているかがわかる」というサイトサービスです。
5,000回未満の検索回数では勝機が小さいかとも弓削は思いますが、ロングテール狙いならありかもしれません。
つまり、ビジネスとしては大きい検索ボリュームを狙いたい、しかし大きすぎれば過当競争なのでツラい、また小さ過ぎれば市場性が低いと知るべきなのです。
とはいえ、どんなビッグキーワードであっても、1位になるサイトは必ずあるのです。
20位以内を目指して努力を重ねましょう。
また、競合性の適したキーワードを選別することも重要です。
これは逆算ともいうべきもので、自社が検索結果の上位に出ているキーワードがあるなら、さらにそこへ注力をして決定的にしようということです。
どんなキーワードで自社サイトが上位表示できているのかが分かるサイトサービスが、RankTracker「検索順位チェッカー」です。
自社にとって有利なフィールド、競合性の適したキーワードをチェックすることができます。
以下は、弓削のサイトのチェック例です。
「食品」が弱いですね。
私としては食品のマーケティングはいちばんの得意分野なので、ここのキーワード対策にもっとチカラを入れたらよいし、製造業全般ではずっと1位なので、これは堅持していこうということになりますね。
さらに、上級者になれば、Google analyticsやGoogle search console(サチコ)を使いこなすと、よりくわしい分析が可能になります。
11 YMYLとE-A-Tへの対応を意識する
Googleの検索アルゴリズムは小さい改定なら年に数回、大きなものでは2年に1回くらい、見直しが行われています。
2020年も、5月あたりに大きめな改定がありました。
このときに重みを増した基準が、YMYLであるとされています。
YMYLとはYour money, your life(あなたのおカネ、あなたの人生)のことで、つまり「おカネや健康情報を掲載しているサイトは厳しく見ますよ」というGoogleの立場のことなのです。
今年前半はコロナの影響下にありましたから、とくに医療情報においてデマやフェイクニュースなど信頼性の低い情報発信は許されない、という決意表明でもあります。
キャッチーだからといって、いい加減なキーワードを選定することはできません。
ですから、医薬品や医療機器、健康器具、健康食品などに関連するサイトは、より信頼性の担保できる情報発信に努めることが求められるといえます。
そして、ここ数年、存在感を増していたのがEATでした。
E-A-Tは、次の要素を指します。
E 専門性 Expertise
A 権威性 Authoritativeness
T 信頼性 Trustworthiness
求められるキーワードに基づいて信頼できる記事を、地道に書いていくことが肝要であるようです。
さて、最近、著書を買ってくださった方にサインをさせていただくときは、次のような言葉を書くようにしています。
「言葉のサイズが、ビジネスのサイズを決める」
それは、あなたのビジネスが世の中のどのようなニーズに刺さるものなのか、そのボリュームはどれほどなのか、ということです。
ただし、ここまで述べてきましたように、大きければいいというものではありません。
大きい市場は過当競争ですし、大手企業などの強敵がいます。
Googleに広告出稿をしているウェブサイトは、オーガニック(自然検索)でも上位表示になるとのウワサもあります。
ということで、私たちは発見したキーワードを最大限に生かしていくしかありません。
そのキーワード群をサイトタイトル自体に含める。記事を書くなら1ページ1記事、1キーワード狙いで。また、タイトルにしっかりキーワードをベタで入れていく。目次ページをつくって、まとめて読みしやすくする。
Twitterに#(ハッシュタグ)をつけてキーワードの経路を設けるのもいいでしょう。
そして、キーワードも記事コンテンツも、「質か量か」と問われれば、「質も量も」と言わざるをえないのです。
長文の記事をお読みいただき、ありがとうございました。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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