天才の歌詞を鑑賞する
元・作詞家志望だったコピーライターの弓削です。
私の青春にBGMをつけてくれたアーチスト、クリエイターの方がたはたくさんいらっしゃいますが、なかでも作詞家の松本隆さんは特別な存在です。
洗練されきったワードのチョイス、シーンの浮かぶ情景演出、人のまっすぐな心を物語や小物を通じて切なく描く技巧──。
同じく当代の天才、筒美京平さんや松任谷由実さん、大瀧詠一さんとの協業で生み出した楽曲は宝石のようにキラキラと光を放ち、時代を経ても褪せることがありません。
しかし、いまの若い人たちには馴染みが薄かったり、理解されないこともあるようで、ちょっとキーワードの勉強かたがた、鑑賞会(このコラム上で)を開らいてみたいと思います。
松田聖子さんの数あるヒットのなかでも、弓削がいちばん好きな「マイアミ午前5時」の歌詞を鑑賞したいと思います。逐語で解説を入れておきましたので、末尾に置いたYouTube(公式が見当たらなくて)を再生しながら、お楽しみください。
本当は歌詞そのものを掲載すればわかりやすいのですが、それは著作権に対するリスペクトでやめておきます。
マイアミ午前5時 (1990年)
作詞 : 松本隆
作曲 : 来生たかお
・・歌詞の1番
◆「三叉路」は、選択肢の象徴であり、それを目の前にして最善の道を選べない(横切って)いる自分の心を表している
◆「タクシーだけ待ってた」の「だけ」は、相手の心変わりを待ってもムダであることを知っているという強がりを表している。字数合わせの役割もある
◆「靴の底」の「砂」を、痛みを伴う想い出に例える秀逸な比喩。捨ててしまわなければつらい想いと、しかし「あの夏の」といつまでも忘れられないほど強い想いであることを示唆
・サビ
◆ 「あなたも忘れないで」と、せめて記憶にとどめてもらうことしか、いまは望めない切なさを表現
◆「センターライン」は、自分と相手の立場を切り分ける一線の象徴、距離感
・・歌詞の2番
◆「出逢った瞬間に傷つく日を予感した」のは、一目惚れでした、でもちゃんとした出逢いではなかった、ということ
◆ふだんはアルコールは飲まない(自分の缶ビールは用意していない)。でも、いたずらや冗談、あるいはわがままを仕掛け、相手の心に小さな想い出でも残したい
◆「遠い船の灯り」は自分の生き方を客観的に投影する対象
◆「鞄」は、都会での仕事や生活、しがらみを指す
・サビ
◆彼はリゾートで稼いでいるビーチボーイである
◆本当は、同じ道を共に歩いていきたいけれど、いまはせめてキスを。。。
製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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