取り上げられるプレスリリース4
本記事では、ネーミングと企業の物語を生かしてプレスリリースを取り上げてもらう方法について書いています。
ネーミングはプレスリリースと相性がいい
キャッチコピーやキャンペーンタイトルなどは、どんなにおもしろくてもなかなか記事として取り上げられることはありません。
公共団体ならともかく、私企業の一方的な宣伝メッセージでは、メディアには掲載されづらいことは当然です。
しかし、ネーミング、つまり商品名となると事情は変わってきます。
たとえNHKであっても、とても役に立つユニークな商品であれば商品名をきちんと紹介しないと視聴者・読者が不便を感じることもあります。
そして、笑ってしまうようなネーミング、時代を映しているネーミングなどは、なによりそれだけでニュース性を持ちえます。
事例をあげてみましょう。
事例1
愛知・樹研工業の〔パウダーギア〕。
樹研工業さんは、微細な樹脂射出成形の技術を持つ会社です。
技術力をアピールする“看板”として製作された100万分の1gの歯車は、一般紙やテレビでも話題になりました。
しかし、ネーミングをせずにプレスリリースを出した10万分の1gのときは、どこにも紹介されなかったのです(1万分の1gのときは結構、業界紙誌に掲載されたのに!)。
事例2
農機具メーカーはたくさんありますが、テレビのバラエティ番組内でまで紹介されるのは筑水キャニコムだけでしょう。
あなたも聞いたことがあるのではないでしょうか。
〔草刈機まさお〕や〔芝耕作〕で知られる同社は、パロディネーミングに命をかけています。
とくに草刈機に関しては、その後、大手企業であるマキタが草刈機のCMに草刈正雄本人(?)を起用したところ、業界では「大手なのに後追いをした」と受け取られました。
両者の商品を混同したユーザーがホームセンターなどで、「草刈り機まさお?、ああこれだ、テレビでコマーシャルやってやつだ」と購入しているのではないかと想像してニヤニヤしております。
事例3
手前味噌ネタで恐縮ですが、以前にJTのダイコン品種に〔役者横丁〕と弓削がネーミングしたときは、朝日新聞の「天声人語」に取り上げられました。
その他にも、トレンド雑誌などで取り上げられました。
ヘンな名前の野菜品種がある、というわけですね。
以上のように、企業が発信するメッセージのなかでもネーミングはパブリシティとの親和性が高く、プレスリリース戦略の重要なカギとなるのです。
物語のチカラで掲載される
前回記事でも触れましたが、かつての「プロジェクトX」が視聴者の共感を呼んだように、企業の商品開発の物語や、苦境から奇跡の復活を遂げたというようなストーリーは感動を呼び、ニュース性をもち得ます。
ブランディングとしても企業の物語は活用するべきなので、セミナーでもお話をしています。
弓削が好きで、いつもお話をしているのは福岡の明太子メーカー、ふくやさん。
「福岡に、“さん”をつけるべき会社が3つある」と言われ、尊敬されている会社さんの1社です。
ここの創業者さんは、大東亜戦争が終わって命からがら大陸から引き上げてきた人なのですが、そのときに「一度は失ったようなこの命、これからは地域貢献、社会貢献のために使おう」と決意。
勤め人では寄付もできないとして食品分野で起業し、朝鮮半島で覚えた味を日本風にアレンジして、日本で初めて明太子をつくったと言われています。
そして、地元の福祉施設、介護施設に、個人では考えられない金額の寄付を、毎年のようにしていきます。
また、おカネがなくて学校に通えない生徒がいると聞くと、その家の人にも本人にも伝えずに学校にお金を持っていってあげる。
あるいは、近隣の食品メーカーから「その明太子というのをウチもつくってみたいのだけれど」と相談を受ければ、すべてのレシピを惜しげもなく教えてあげて、挙げ句に「同じじゃつまらないから、オタクはこんなアレンジをしてみたら?」というアドバイスまでする。
それでいて、本人は明太子工場の2階の狭い和室に寝起きをするという生涯を送った人なのです。
こういう話、日本人は大好きですよね。
私も、大好きです。
この物語を知ったとき、辛いものが苦手な弓削も、ふくやさんの明太子を一度、食べてみたいと強く思いました。
そして、講演で福岡にお呼びいただく機会があったので、ふくやさんの店舗で買いました。 (けっこう高いのですね、これが。)
大事に持って帰り、食べましたところ、なにやら感慨深い味がしたものです。
さて、ふくやさんは、創業者のエピソードを上手にパブリシティに活用しています。
自社のウェブサイトに掲載するのはもちろん、商品に同梱するパンフレットに記したり、新聞社に取材をしてもらったりしています。
とはいえ、地元では超有名な企業であり、テレビドラマ化、映画化もされているのですが。
あなたの会社の物語を語る方法
セミナーでこうした事例を話し、「あなたの会社でも…」と促します。
ところが、多くのご参加者さんが「でも…」とおっしゃるのが、「ウチには語れるような物語はない」ということなのですね。
しかし、社歴も長い会社なら、必ず何らかのドラマがあったはずなのです。
社内の人たちにとっては当たり前でも、第三者が聞くと「えっ!すごいですね」というようなことは少なくないのです。
とくに、日本人は弱者のV字回復の物語が大好物です。
社業を知らない知り合いにいろいろと話してみて、反応を取材してみてください。
さて、それでも物語がないという会社さんでも、「では、何かこだわっていることはありますか?」と質問をすると、ほとんどの会社さんが「それはありますよ」とご回答が。
それもそのはず、何のこだわりもない中小製造業なんてとっくになくなってしまっているのです。
とはいえ、「コレコレにこだわっています」だけでは物語にはなりません。
しかし、「では、なぜそこにこだわったのか」という原初の発見、気づき、きっかけにまでさかのぼりますと、物語になるのです。
それを、社内にも旗印やビジョンとして周知し、社外にも伝えていく、語っていく……。
企業サイトに掲載するのはもちろん、カタログのうしろのほう、いいえ、名刺のウラのような狭い場所でもいいのです。
そして、プレスリリースにも書いて、せっせと発信していくことが、あなたの会社を知らせる物語の語り方なのです。
次回は、プレスリリースをどこへ送ればよいかについて書きます。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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