会社のロゴ・マークのつくり方
会社のロゴ・マークの考え方、つくり方について解説します
お客様が、あなたの会社といちばん最初に遭遇する体験はロゴ・マークかもしれません。ところが、日本企業のロゴ・タイプやシンボル・マークは、いきあたりばったりでつくられたものが少なくありません。
「いきあたりばったり」でなければ「あたまでっかち」も^ ^;
米国のトップ企業はもちろん、スタートアップであっても考え抜かれたロゴ・マークを掲げている企業はたくさんあります。
ロゴ・マークとは何か
ひと口にロゴ・マークと呼びますが、これは「ロゴ・タイプ」と「シンボル・マーク」という2つの要素からなる概念です。ロゴ・タイプは文字情報。シンボル・マークは目印となるデザインですね。
ロゴ・マークは、いわばもっともシンプルなキービジュアル。バブルの頃はフルカラーや3Dなど派手なロゴ・マークがつくられたものですが、社用封筒やIR資料などモノクロで表現される機会も多いため、過剰なデザインは不要でしょう。
ロゴ・マークの役割と効用
⚫︎認知度・露出効果が高まる
⚫︎性質・イメージが伝わる
⚫︎社業・姿勢が伝わる
⚫︎組織の意思統一をはかれる
しかし、多くの会社のロゴ・マークが「社業を表したもの」にはなっていません。社名自体に問題がある会社もあるでしょう。例えば「ベイシア」という社名は、欧米資本の機械メーカーのように響きます。
ロゴのデザインもごっついですね。建設機械に付けられていたらイメージに合います。
しかし実際の社業は、スーパーマーケットやコンビニ、ホームセンターを経営する会社です。
また、とても多いのが会社名のイニシャルをマーク化して、社名の前に置いているタイプ。私は「イニシャルには意味はない」と思っています。
安直にイニシャルの一文字をマークにするとどうなるでしょう。例えば「井田」という社名をローマ字表記し、その前にイニシャルの「i」を置くとどうなるか。
「井田」が「飯田」になりましたね!
これは極端な例ですが、そもそもアルファベットは26文字しかありません。世界中の膨大な過去企業と必ずかぶります。東京オリンピックの際、シンボルマークの類似が問題になりましたが、これもイニシャルに着目したから。
左が日本人デザイナーによる作品。右が盗作元と疑われたベルギーのデザイン。
個人的には盗作ではないと思いますが、当の日本人デザイナーが過去に剽窃やパクリを繰り返していたことが掘り起こされてしまい、アウトと判定されました。
商業デザインの現場で、三流のデザイナーがパクリを行なっているのは現実だと思います。本事案の本質は、上級デザイナー(メジャーなコンペにローテーションで受賞できる“村社会”に所属)がそうだったという衝撃でした。
また、最近はウェブブラウザのタグにファビコンが表示されます。
このとき、aはアマゾンのものですし、Gはgoogle、fはfacebook、YはYahoo!、Rは楽天、ここへcanvaはCを狙い、NetflixもNを我がものにしたいと、──いいえ、nにはnoteやnotion、notebookLMなども群がっています。
この戦いのなかに切り込もうなんて!
同じアルファベットでも、beatsのような工夫があればまだ救われます。
ヘッドホンを製造している同社のマークは、、ヘッドホンを装着している人の横顔になっていますね。
ロゴ・マークで社業を表す
ロゴ・マークは短絡的にではなく、戦略的にマークを案出する考え方が必要なのです。
とくに重要なのが、コンセプトやミッションを伝えること、何業をしているのかが直観的にわかること、だと思います。
「それはむずかしい」と思いましたか? いくつか実例を見ていきましょう。
例えばナイキのロゴ・マークは羽が生えたように走れるシューズを容易に想起させます。
勝利の女神ニケの翼に着想を得て、スピード感や躍動感を表現しています。スポーツ系の商品をつくる企業としてはぴったりですね。
ウェブ上のアルバムサービスを展開しているpicasaのロゴは、カメラのシャッターを想起させるデザイン。
ロンドン交響楽団のロゴマークでは、L、S、Oのイニシャルを使って、指揮棒を振る指揮者が描かれています。これは、おカネのとれるデザインアイデアですね。
ハンズのロゴマークには漢字由来の「手」が見えます。手で触れること、創造することを通じてワクワクすることを提案する意志が表現されています。
東急グループが、この革新的な業態を1976年にスタートしたことは素晴らしいの一言です。
(ちなみに、現在は先のベイシアグループに所属。マーケティングコミュニケーション力の差異に驚きます)
ベネッセのロゴマークは家族と元気な子供が描かれており、よりよく生きるためには学びが必要、と主張しています。
築地玉寿司のロゴマークは、“いなせ”な板前さんの顔が「つきじたまずし」のひらがなで描かれています。江戸の文字遊びを取り入れたところが粋ですね。
上記の他にも、住宅メーカーなら家を建てているマークにしたり、DIYメーカーなら工具をマーク化したりできるでしょう。
本来、日本はピクトグラムを生んだ社会であり、家紋の歴史をもつ国でもあります。インバウンドの機会なども含めて、非言語のコミュニケーションが問われるのがいま。
安易にイニシャルに逃げないデザインを、ぜひ検討してみてください。
本記事は、拙著「あなたの商品のウリを1秒で伝えてください」(自由国民社)の内容を生かして書きました。
キービジュアルにご興味のある方は、ぜひ手にとってみてください。
製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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