企業スローガンの役割を考える
1●企業スローガンがないのはもったいない
あなたの会社に企業スローガンはあるでしょうか?
意外と、老舗の和菓子屋さんにこそあったりしますね。
「企業スローガン」というと、なんだかカッコのよい未来を語ったり、理想的なメッセージを掲げるていどのもの、と思われがちです。
けれど、あるタイプの企業スローガンならとても有効、だからつくりましょう、そういう話を何回かに分けて書きます。
「企業スローガン」とは、会社名のそばに置かれているキャッチコピーの一種です。ステイトメント、タグラインなどとも呼ばれます。
大手企業のほとんどが制定しているもので、「私たちの会社は社会へ何を提供しようとしているのか、どこをめざしているのか」などを広く宣言し、約束する1文です。
最近は中小企業も策定していることが増えましたが、お手本が大企業しかないせいか、中小企業なのに大手のような宣言をしてしまっている会社も散見されます。
ではまず、大企業の企業スローガンについて。
以前、私がマーケティングを担当した企業から実例をいくつか見ていきましょう。
*大手企業のスローガン例
水と生きる サントリー
Your Vision, Our Future オリンパス
未来は、ミルクの中にある。 雪印メグミルク
世界にまた新しい世界を。 積水化学
ひとのときを、想う。 JT
Inspire the next 日立製作所
A Better Life, A Better World パナソニック
今日を愛する。 ライオン
見ておわかりのように、こうした大手企業の企業スローガンはイメージを語らざるを得ません。
それは、いろいろな事業部、製品を擁する大企業ならではの大人の事情があります。
1文で表そうとすれば、どうしても抽象的になりますし、ひとつの事業部や商品に限定したメッセージにすれば別の部門からクレームが出る。
それゆえ、大手企業では事業部ごとにもスローガンがあったり、商品カテゴリーにもきちんとスローガンを策定しているケースが少なくありません。ますますフクザツですね。
2●大企業とは企業スローガンの役割が異なる
さて、それに対して中小企業の企業スローガンはどうでしょうか。
そもそも中小企業では企業スローガンを制定しているところは多くありません。
下記は、多くはない中小企業の事例です。
*中小企業のスローガン例
どんなバルブもすぐ揃う フローコントロール(株)
計量・包装・検査システム (株)イシダ
Ptセンサーのトップメーカー (株)ネツシン
インダストリアルキャスターの専門メーカー (株)内村製作所
お客様第一の、あんづくり (株)ナニワ
世界のふっ素屋 中興化成工業(株)
立方骨インソールで世界を変える。 (株)BMZ
大手企業のスローガンとは、そうとう趣を異にしていますね。非常に具体的です。
まるで…、そう、まるで販促のキャッチコピーのようです。
アピール(販売促進)のチャンスは、なんであろうとしっかりと有効に活用していく。
企業スローガンとは、大手にとってはブランディングであるが、中小企業にとっては夢を追う1行ではなく、引き合い獲得、販売促進のためのキャッチコピーなのだ、ということに気がつきますね。
私たち中小企業は、お客様との意味あるコミュニケーションを進めるべく、具体的なスローガンを提示するべきなのです。
それは販売促進のキャッチコピーであったり、自社の製品メニューであったり、他社に負けない技術名称をぶちあげるものであったり……。
こうした企業スローガンが、名刺やウェブサイト、カタログにはもちろん、会社の看板や社用車のサイドにプリントされている。
名刺交換したり、DMを受け取った相手だけでなく、街のどこかでクルマを見かけたり、休日に降りているシャッターを眺めた方が「ウチの会社で課題になっている部品を供給してもらえるのでは?」と感じて引き合いにつながらないとも限りません。お客様との接点はどこに転がっているかわからない。
顧客とのコミュニケーションの場に統一して入れ込み、「私たちはこれこれができる集団です、私たちのご提供できる価値はこれです」と宣言すれば、お客様からご質問いただくことにもつながりますし、社内もピリッとしますし、そしてなんだかカッコいい。
デザインやビジュアルは一目で伝わる瞬発力を持っていますが、コトバには記憶され、口コミされ、ネット検索してもらえる伝播力があるのです。
次回は、多くの企業が間違えている企業スローガンの捉え方と、経営理念との違いについて、お伝えします。ぜひ、チェックしてみてください。
おそらく、企業スローガンに関する記事は4回に渡ると思います。よろしくお願いいたします。
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コピーライター、製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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