人気の観光地をつくる方法

47都道府県のうち、46都道府県からセミナー講師として呼ばれている弓削です。
残すところは島根県1県。島根の皆様、お待ちしております。
ということで、コロナも明けたことで対面の講演会にお呼びいただく回数が増えています。コロナ前と異なるところは、オンライン参加も加えたハイブリッド形式が多くなっていることでしょうか。
そして、地方へ行きますとご相談を受けるのが「〇〇〇が売れないのですがどうすればいいですか?」、「どうやってお店を宣伝していけばいいですか?」。
そして、いまの定番は「インバウンドが盛んなのにこの地域はうまくいっていない、何か方法はないですか?」というもの。
どんな地域にも素晴らしい観光資源があることは間違いありません。
アクセスがわるいうえ、有力な名物がなくても、それを逆手にとって「日本一、星がキレイに見える」として人気になったのは長野県の阿智村です。
地元の変哲ないコメを、ローマ法王に献上したうえ、問い合わせに対して「百貨店に聞いてください」と答えて取り扱いを増やしていった石川県の「神子原米」のケースもあります。
私は町・村おこしの案件を受注することはありませんが、この分野のコンサルティングを専業にして行政に食い込んでいる業者は多数います。そうした業者に安直に依頼することは考えものですね。
地元の人たちの衆知を集めて、危機感と価値観を共有して進めていって欲しいと思います。そのためのヒントを少し書かせていただきたいと思います。
人気観光地になるために必要な4つのこと
1 コンセプトをつくる
何をやって、何をやらないかを決定するための”物差し”になるのがコンセプトです。
コンセプトを明文化し、関係者や地域住民の間で共有しておくことが重要。これがズレていると、フライヤー1枚のキャッチコピーやキービジュアル表現、一つとっても齟齬が生まれ、イメージがブレていくのです。
とうぜん、外部から来る観光客にとっても、つかみどころがないバラバラの印象となってしまいます。
2 目的地をつくる
観光客がそこに行くことを目標にしたくなるような、デスティネーション=”目的地”をつくるということです。
神社仏閣や絶景ポイント、岡や滝、湖など、なんでもいいのです。ただし、そこへ行くことで満足できるような歴史や物語をきちんと伝えていくことが大切です。
私の地元の浅草なら、浅草寺や雷門、リピーターなら今戸神社や合羽橋商店街などがこれにあたります。
3 街道をつくる
歩くことや寄り道することを楽しめる“街道”をつくり、途上をエンタメ化するということです。
これも目的地があってこそですが、そこへ移動する道中を楽しめてこそ観光客が分散し、賑わいが演出されます。神社やお寺なら参道ですね。
道みちには、売店やカフェ、旅館、観光地ならではの何かの体験ができるショップなどが居並び、家族や仲のよい友人同士が楽しくそぞろ歩きします。
4 産品をつくる
買って帰れる定番のお土産をつくることが重要です。
よく各地には「ご当地コロッケ」がありますが、大阪のある食品メーカーが全国のコロッケを一手につくっていたりします。
初級は、このコロッケやレトルトカレー、クッキーなどの「あるある商品」に地名を冠しただけのもの。次は、ご当地の農作物や海産物を使ったカレーや漬物など。上級は、地元の産品を、地元ならではのレシピ・製法で加工したもの、ですね。
架空の観光資源例を考えてみる
例えば、ある地域が”ひまわり”で町おこしをしたいと考えたとします。
コンセプトとして必要なのは、「なぜ、ひまわりなのか?」に対する答え。全国No.1の生産量であるとか、ひまわりの種子から健康機能性を持つ成分を抽出できた、などですね。さらに「ひまわりでどんな体験価値を届けるか」。それを、価値観として認めてもらえるような一文に書き、関係者で共有します。
ブランド・ネーミングやロゴデザイン、印刷物やウェブ上でのデザインルールブックもつくっておくと表現が安定してよりよいでしょう。
目的地は、おそらく一面のひまわり畑が望める丘の上でしょう。このポイントでひまわり畑をバックに写真を撮ると「幸せになれる」という伝説をつくるのもいいですね。
この目的地にはドローンで映像が見られたり、自分でドローンを運転できるアトラクションがあってもいいでしょう。
また、お気づきのようにひまわりは夏の間だけのアイテムです。それ以外の時期はどうするのか? は課題です。そこで、”ひまわり博物館”のようなテーマパークを目的地にして、オフシーズンにも人に来てもらえるように計画します。
この博物館が、「また来たい」と思えるような内容であるかどうかで、プロジェクトの成否が決まるでしょう。
途上としては、「ひまわりの丘」へ至る「ひまわり街道」になるでしょうか。ひまわりを使用したスイーツや健康食品を楽しめるカフェやレストラン、お土産物屋さん、旅館・ホテルなどが並ぶ道です。
マイカーやバスでアプローチするルートも別途、必要ですね。さらに、熱気球に乗って遊覧しながら往復できる体験は、高額でも人気になりそうです。
産品としては、ひまわりは考えやすいのではないでしょうか。「ひまわりサブレー」とか、「ひまわりカマンベール」など、地名を冠した加工食品は欲しいところです。
また、産品ではありませんが、小説や映画というコンテンツ商品(「ひまわりの丘でもう一度会いたい」など?)にも発展させることができると、聖地巡礼の効果も発動し、観光客数が安定します。テレビドラマのロケ地として誘引に力を入れるのもいいでしょう。
あとは旅行代理店に営業をかけ、ツアーを組んでもらうなどウィンウィンとなる商品価値を構築したいところです。また、ウェブやSNSアカウントにも担当者を決めて注力し、拡散を狙います。
というようなアタマの体操をしてみましたが、いかがだったでしょうか。
ぜひ上記の「ひまわり」をあなたの地域の観光資源に置き換えて考えてみてください。
製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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