マーケティングに物語のチカラを生かす
企業にも商品にも、物語やストーリーが必要だといわれます。
かつての人気番組に「プロジェクトX」があったように、ものづくり企業には感動する物語が多くあります。
そして、無関係なバラバラの事象を記憶する方法に「物語化」があるように、企業を記憶することや好感することは、物語によるところも大であるといえます。
人に記憶してもらい、検索してもらい、指名買いをしてもらい、リピートして、ファンとなってもらい、友人・知人にも口コミしてもらう、そんな黄金の流れも決して夢ではないのです。
■あなたの会社の物語を探そう
プレスリリースも、興味を引く物語があれば、メディアに取り上げられやすくなることも事実。
こうしたことの積み重ねによって共感され、記憶され、選ばれるわけです。
では、ウチの会社の物語って何かあるのか? と考えこんでしまいますよね。
同時に、物語をうまく語ることなんて無理だという意見もよくお聞きします。
ところで、古来、物語のパターンはいくつもないといわれています。
そのパターンのすべては、シェイクスピアが書いてしまった、ともいわれます。
そして、煎じ詰めればほとんどの物語が、ひとつのパターンに帰着するとされています。
それは、おおよそつぎのような流れです。
(1)主人公(または親しい人)に危難、課題が降りかかる
(2)それを解決するために移動する(旅など)
(3)移動の途中に妨害者があらわれる
(4)仲間や協力者ができ、なんとか成果を得る
(5)危難は解消され、主人公の成長(または死)が実感される
「ハリー・ポッター」も「ワンピース」も「鬼滅の刃」も、「新撰組」も「コインロッカーベイビーズ」も、すべてそうなのです。
乱暴にいってしまえば、新しい筋立てなんてないのです。
あるのは新しい切り口や舞台設定だけ。
あなたの会社やビジネスにまつわる何かに、必ずその元となるネタはあるはずなのです。
その何かは、人に話すと感心されることです。
つまり、自身では気づかないことも多いのです。
「自分のことに限ってわからない」
むかしから傍目八目ともいいますからね。
■あなたの会社の物語をつくる質問
企業の物語といっても、「起承転結」や「序破急」を意識する必要はありません。
人は、V字回復のわかりやすいストーリーなどが大好きです。
一度、大きな失敗をしてひどく落ち込み、そこから回復した、そうしたシンプルな流れでもよいのです。
ですから、自社のオリジナルなストーリーを発見するには、誰か第三者に根掘り葉掘り聞き出してもらうのもよい方法といえます。
「やっぱりそんな元ネタもない」とおっしゃる会社さんも、「では、こだわっていることはありますか?」とお聞きすると、「それはありますよ、これこれが……」と語り出してくれることがほとんどです。
ただし、「こだわっていること」を伝えるだけでは、物語にはなりません。
ところが、「では、なぜそこにこだわったのですか?」「そこに着目したきっかけは何でしたか?」という質問への答を語ってもらうと、それは物語になっていることが多いのです。
単に、「ここに、こだわっている」ではどこの商品も同じ。
こだわってこなかった商品は、すでに生き残ってはいないでしょう。
ということで、「なぜ、そこにこだわったのか」「こだわるきっかけをくれたのは何(誰)か…」に対する回答を考えてみてください。
おそらく、そこにあなたの会社ならではのユニークな物語が眠っているに違いないのです。
そして、それが「ルーツ」であるとすれば、その行先は目標やゴールがあります。
ルーツを、どのようにして会社の目標達成へと導くのか?
そこに、他の会社との違いが、別の言葉で言えばミッションがあるのです。
そのミッションを社内で共有してください。
あるいは社外へも旗印として提示し、人事採用にも生かして欲しいのです。
それが、あなたの会社の物語の正しい使い方になるのです。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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