ネーミングを生成AIで作成する方法
ネーミング作成を生成AIに任せたい!
キャッチコピーも書ける生成AIですから、とうぜんネーミングを案出、作成することもできます。
現時点の問題は、プロンプトをどうするかということですね。これは、「ネーミングコンセプト」を考えることができれば、それほどむずかしいことではありません。
それに、「現時点」と書いたのは、やがて生成AIがプロンプトをうまく考えてくれたり、必要項目を質問してきてくれたり、あるいはネーミング作成専用の優れたGPTsがリリースされるからです。
そこで、本記事では「キャッチコピーを書いてもらう手順」に続き、ネーミング作成の方法を解説したいと思います。
目次
1 プロンプトにはこれを書く
2 実際に生成してもらいました
3 追加注文するとどうなる?
4 専用のGPTsに作成してもらう
5 人間のコピーライターが考えると?
さて、NGなネーミングにありがちなマイナスポイントのは、次のようなところではないでしょうか。
・何の商品かわからない
・商品のメリットが伝わらない
・対象者がわからない
・読めない(複数の読み方がある漢字、外国語、記号)
・独りよがりのダジャレ、言葉遊び
ネーミングを記憶したり、ネット検索してもらいやすいことなども考慮すると、留意する点は他にもいろいろあるのですが、とくに生成AIに考えてもらううえでは、上記のような点に気をつければいいでしょう。
(※本記事では、商品、サービスなどのプロダクトをまとめて「商品」と表現しています。)
1 プロンプトにはこれを書く
例によって、「あなたはプロの優秀なネーミングライターです」からはじめ、さらに「ネーミングの条件は下記です」と書いたのちに、次の要素を記入してください。
プロンプトに必要な要素
#商品コンセプト(商品カテゴリー、定義)
#商品のメリット、特長
#顧客ターゲット
#希望の文字数
#ネーミング案の数
#その他 禁止ワードなど
「商品コンセプト」は、むずかしく考えず、「こんなとき、誰が、どう使って、どう役立つ〇〇」のような紹介文で十分です。商品開発コンセプトを流用してください。
以上を入力すると、とりあえずネーミングの案が出てきます。
ただし、一回でよいネーミング案が出てくるかというと、そうではありません。この点は、やはりネーミング作成がキャッチコピーを書くよりもむずかしい現実を反映していますね。
それでは一度、実際に生成AIに考えてもらってみましょう。
●(例)トイレットペーパーを片手でカットできるホルダーのネーミングを考えてもらう
#商品コンセプト:トイレットペーパーを片手で簡単にカットできるトイレットペーパーホルダー
#商品のメリット:片手が不自由な人が、他者に頼らずにトイレを済ませることができる
#想定ターゲット:半身麻痺、骨折など、片手が不自由な人、子供や不器用な人
#希望の文字数 4文字〜10文字
#ネーミング案の数 10個
#その他 とくになし
以上のような内容からプロンプトを書くと、次のようになります。
●プロンプト文例
「あなたはプロのネーミングライターです。新製品のトイレットペーパーホルダーのネーミングを、下記の条件を守って考えてください。
商品コンセプトは、[片手が不自由な人が、簡単に片手でトイレットペーパーをカットできるホルダー。]
メリットは、他者に頼らず、1人でトイレットペーパーをカットできて便利。想定ターゲットは、半身麻痺の人、片手を骨折している人、高齢者、子供など。
文字数は4文字から10文字以内で考えてください。ネーミング案は10個必要です。」
2 実際に生成してもらいました
では、上記のプロンプトによってどんなアウトプットが出たでしょうか。
今回は5種類の生成AIに実際に書いてもらったネーミング案で比較していきます。
まずはchatGPT4oです。
・片手切り
・ハンドカット
・カットワン
・楽カット
・かるカッター
・ひとりカット
・ワンタッチ
・カットエイド
・片手すぱっ
・ペーパースリム
▶︎感想/評価 : 「かるカッター」は面白いですね。「カットエイド」も、商品の主旨を理解していることがわかります。
では、次はGemini2.0です。
・楽々カット
・片手スル
・自立ペーパ
・ワンタッチ
・助かるポン
・サクッとる
・ひとり巻く
・安心アシスト
・軽々ペーパー
・スマイルカット
▶︎感想/評価 : 軽快な響きが多いのですが、ちょっと軽すぎるようですね。商品によっては向いているのかもしれません。
次は、Claude3.5です。
▶︎感想/評価 : 「カット」で攻めてきました。とくに「ユニカット」は「ユニバーサル」というキーワードを活かしたもので、加工すればよくなるかもしれません。
そして、次はPerplexityです。
・らくカット
・ワンハンドロール
・イージーペーパー
・カットらくん
・スマートロール
・ひとてカット
・サポートホルダー
・カットアシスト
・らくらくペーパー
・スマイルカット
▶︎感想/評価 : 幅広く考えてくれていて、これを参考に人間が考える助けになりますね。
最後はFeloです。
・カットン
・ワンカット
・ひとりカット
・らくカット
・片手ホルダー
・スパッと
・ワンハンドル
・かんたんカット
・ひとりホルダー
・片手らくらく
▶︎感想/評価 : まぁ順当なのですが、「スパッと」はずいぶん“カット”しましたね。
3 追加注文するとどうなる?
いかがだったでしょうか。
以前の生成体験に比べると、相当そつがなくなっており、うまくなっているなと感じます。
これらのアウトプットを参考に、自分の頭で考えるのもいいでしょう。
ですが、一度の生成でよい結果が得られることは多くありません。生成AIたちに「追加注文」をすることで、もっとよいアウトプットを引き出せないか、チャレンジしてみましょう。
① 「造語を使った案も考えてください」
この追加プロンプトをchatGPTに入力してみました。その結果は以下のとおりです。
・カテキル
「片手で切る」をもじったシンプルで覚えやすい造語。
・キリーナ
「切る」と「~な(便利・スマートなど)」を掛け合わせた親しみやすい響き。
・ペパッチ
「ペーパー」と「タッチ」を組み合わせた軽快な語感の造語。
・カタキット
「片手」と「キット(便利な道具)」を合わせた響きで、機能性をアピール。
・スパトル
「スパッと切れる」と「ツール(道具)」を組み合わせたスマートなネーミング。
・キレッシュ
「切れる」と「フレッシュ」を掛け合わせ、爽やかな印象を与える名称。
・ワンカチ
「ワン(片手)」と「カチ(簡単に切れる)」を組み合わせた語感が楽しい造語。
・ハネット
「片手(ハンド)」と「カット」の響きを取り入れた柔らかい名前。
・テカリオ
「テ(手)」と「カット」を基にした軽快でユニークなネーミング。
・カットリオ
「カット」と「利便性」「快適さ」を感じさせる語感を意識した造語。
▶︎どうでしょうか。なかなか苦しいですが、アイデアを出すヒントにはなりそうですね。
②「荒唐無稽な案も考えてください」
これをGeminiに入力してみました。そのアウトプットは次のとおりです。
・タイムスリップカット
ボタンを押すと、未来の自分(もしくは歴史上の人物)が現れて、一瞬でトイレットペーパーをカットしてくれる。
・魔法のチョキチョキ
呪文を唱えると、ホルダーが魔法のハサミに変身し、自動でカット。
・ブラックホールカッター
トイレットペーパーを吸い込み、必要な長さにカットするブラックホールのような機能を搭載。
・宇宙人お手伝いロボ
小さな宇宙人がホルダーの中に住んでいて、テレパシーでカットの長さを感知し、ハサミでカット。
・タイムマシンペーパー
トイレットペーパーを引っ張ると、歴史の出来事が目に浮かぶ。カットするとその出来事が起こる。
・ドラえもん式カット
ドラえもんの道具のように、あらゆる形のトイレットペーパーに対応し、どんな形にもカット可能。
・心を読むペーパーカッター
使用者の気持ちを感知し、必要な長さに自動でカット。
・願いを叶えるペーパー
トイレットペーパーに願い事を書くと、カットした長さに応じて願いが叶う。
・未来予知ペーパー
カットした部分の未来を予知できる。
・感情表現ペーパー
切るときに感情を表現できる。例えば、嬉しいと虹色の紙が出る、悲しいと涙の形にカットされるなど。
▶︎荒唐無稽とは、SFのことのようです。この「荒唐無稽」は、「ファンタジックな」や「奇想天外」など、他の言葉に置き換えてみてもいいですね。
③ 「漢字を使った案も考えてください」
この注文は、私も実際によく使っています。日本発の生成AIであるFeloはどんな回答を出してくれたでしょうか。
・片手切(かたてきり)
(片手で切れる機能をシンプルに表現。)
・楽切(らくぎり)
(楽に切れる便利さを強調したネーミング。)
・一手切(いってきり)
(「一手=片手」で切れることをわかりやすく表現。)
・切楽(きらく)
(「切る」と「楽」を組み合わせ、使いやすさを表現。)
・片楽(かたらく)
(片手で楽に使えることを簡潔に伝える名前。)
・自切(じきり)
(「自分で切れる」ことを強調し、独立性をアピール。)
・片手楽(かたてらく)
(片手で楽に使える安心感をそのまま表現。)
・楽々切(らくらくぎり)
(「楽々」と「切る」を組み合わせ、親しみやすさをプラス。)
・一人切(ひとりきり)
(「一人で切れる」安心感をストレートに伝える名前。)
・片切(かたぎり)
(片手で切れるシンプルさを漢字2文字で表現。)
▶︎実はClaudeでも出力してみたのですが、荒唐無稽すぎましたので、「日本発」の生成AIに訊いてみました。
それでも、生成AIはやはり米国の文化なので、漢字の活用は容易ではないようです。
この他にも、競合の同様商品のネーミング例を入力したり、「外国語で考えて」、「リズム感のよい」、「刺激的な」、「ロマンチックなネーミング案を」、「〇〇に気をつけて…」、「笑えるネーミング案を」など、いろいろな追加注文をしてみると、アウトプットの幅が広がると思います。
4 専用のGPTsに作成してもらう
chatGPTには、ある目的に特化してカスタマイズされた「GPTs」という生成AIを使うことができます。
chatGPT proなどの有料プランに入るとGPTsを作成することができるのですが、使用するだけなら無料プランでも可能です。
ネーミング作成やキャッチコピーライティングのためのGPTsがありますので、これを利用してネーミングを作ってもらうこともできます。
まず、下記のウェブページで「ネーミング」と入力して検索します。
表示されたGPTsのなかからよさそうなもの選んで、プロンプトを入力して作成します。
試しに作成してみましたが、心なしかより使えそうな案が出力された気がしました。
5 人間のコピーライターが考えると?
ところで、本記事の例題である「片手でカットできるトイレットペーパーホルダー」とは、以前に私が支援先と商品開発していた案件そのままです。
そのときには、私自身がネーミング案をいくつか提案していました。そのなかで私が強く推していた案が、次です。
「ワンハンドレット」
ワンハンド(片手)でカットでき、トイレ周りの商品にみられる「レット」をつけて、商品カテゴリーを表しました。(例:「ウォシュレット」「ブルーレット」ほか)
さまざまな事情で、商品開発プロジェクトは頓挫してしまったので、このネーミングは浮いてしまいましたが。。。
ということで、生成AIでネーミング案を作成する際は、ぜひいろいろと注文をつけてみてください。生成AIのいいところは文句を言わないことですからね。
(先日、Geminiが何度も質問を繰り返したユーザーに酷い文句を言ったらしいですが)
ここまで、生成AIによるネーミング作成の方法を書いてきましたが、その土台はやはり基本的なキーワードの考え方やマーケティングのエッセンスがあります。
それについては、拙著「ネーミングの極意」に基づいています。さらに知りたい方は、ぜひ本書をチェックしてみてください。
▶︎▶︎ネーミング作成について書いた記事はこちらから。
▶︎▶︎生成AIの全般な活用法について書いた記事はこちらから。
製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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