製造業に必要なコロナ後 5つの視点
アフターコロナとか、ポストコロナなど、コロナ後のビジネスがどうなるかは、正直なところ明快に言い切ることはできません。
本記事では、製造業が、ポストコロナのビジネス展開を考えていくとき、事業そのものや製品・技術の方向性、あるいは販路開拓の場、職場環境を考えていく上で、どのような検討をしていくべきかについて書いています。
製造業に必要な5つの視点
< 1 > ドメスティック化
< 2 > コンペリング化
< 3 > オンライン化
< 4 > ディスタンス化
< 5 > リモート化
ひとつずつ、説明していきます。
< 1 > ドメスティック化
よいものとして進んできたグローバル化の、わるい側面が明確化してしまったのがいまです。
そのため、セキュリティ上も国内に閉じてコントロールすべきアイテムがあると思い知らされました。
マスクは、8割が輸入であるうえ、必要なときはどの国も必要になるわけです。
中国政府は、マスク製造工場に事実上の禁輸出を課したうえで、さらに1月から逆に世界中からマスク輸入を強化。
日本でマスクが買えなくなるわけです。
また、アルコール殺菌剤を製造している関連先企業は、生産したくても原材料が入手できない状態に。
つくれば売れる状況を、指をくわえて見ているしかないそうです。
住宅メーカー、建材関連では、便器や照明器具の一部部品が中国工場から届かず、建築工事全体がストップ。
その間も借入金利がかかることを考えると、事業会社は眠れませんね。
このように、あるていどの高コストの代償を払ってでも、セキュリティ上、国内に回帰させるべき産業、製造ラインがあります。
アイリスオーヤマでは、7月からのスケジュールではありますが、本社工場でのマスク生産体制を爆増強。
国内生産、国内消費への市場転換にコミットしています。
国内回帰する種々の生産機能に対して、一定ていどの価格競争力を持って提案ができれば、ひとつの受注の柱を立てることができるかもしれません。
これは受注に限ったことではなく、外注先や生産拠点、サプライチェーンをどうするかという判断にも影響を与えるものです。
< 2 > コンペリング化
コンペリングとは、「切実」のこと。
つまり、「不要不急」を後回しにする傾向は残っていきますので、切実な商品に関わることを意識していくということです。
簡単に言えば生活必需品です。
いくつかのキーワードをあげます。
・省力化関連
人手不足は変わりませんが、これからは「人手を増やすべきではない」とも考えられます。
そのため、自動化、ロボット化の流れが一気に加速する可能性があります。
飲食店の注文なども電子パネルに置き換えるところが、小規模店舗でも出てくるでしょう。
そのための機器類、センサー類などは有望な技術といえます。
・健康関連
リスクヘッジ支援や健康・予防医療産業などのサービスが拡充していくなら、そのなかで求められるツールや機器類は何か、と考えます。
人工呼吸器の生産に、医療機器とは縁のない会社が取り組んで話題になったケースもありました。
この2〜3ヵ月で弓削がお受けした新商品のテーマは、その多くが「清潔」「殺菌」「非接触」関連でした。
・不安・不快関連
上の「健康関連」項目でも見たように、実際はどうでも、ウイルスの存在を意識する「にわか潔癖症」のニーズが増えています。
つまり、「健康」を超えて、不安・不快を解消する製品は有望であるといえるでしょう。
不安ということでいえば、社員の人心のケアも経営上は切実です。
今回の騒動のなか、メンタルの弱い社員、必須の仕事をしていない社員が誰かということが露わになります。
人材活用は弓削の専門外ですが、ケアが必要な社員もいることでしょう。
その他、食品メーカーでも、外食産業をターゲットにしていた業務用の会社は不調になり、エンドユーザー向けの商品製造、またはその素材提供をしている会社は好調なのです。
< 3 > オンライン化
販路開拓や集客に関しても、どうしても変わっていかざるをえません。
いまや、飛び込み営業はもちろん、ルートセールスであっても敬遠される状況です。
顧客に「紙のカタログを置いていかないでくれ」と言われた営業員さんもいます。
そうすると、どうしてもオンライン、つまりインターネットでの販路開拓に力を入れざるをえません。
受発注もすべてオンラインで完結する、と考えると、製品の形態やパッケージングも変わっていくかもしれませんね。
書籍や旅行予約からはじまったネット通販は、いまではほとんどのものが買えるようになっています。
洋服も自動車も、リフォームや家さえもネットで買うことができます。
それでも、生鮮食品やモード系の洋服、注文住宅はこれから、といえるでしょう。
本コラムでも、インターネット集客についての記事に注力していこうと考えています。
それでも、「モノ」をつくっているあなたの会社は恵まれているのだと思います。
サービスを売っている会社は、いずれも業態転換などの出直しを迫られているのですから。
< 4 > ディスタンス化
製造ラインや就業形態についてです。
いわゆるソーシャルディスタンスですが、製造業は工場を見る限り、それほど密なケースはないと思っています。
大きめな生産設備1台に1人。組み立て・組み付けをセル式で担当する技術者1人。
1人のゾーンを広く取った工場が多いと思いますが、そうでない場合はディスタンスを考えなければいけません。
事務職や会議なども同様です。
そもそも、日本の職場も電車も、人と人との距離が近過ぎです。
これを機会に、事業所の地方移転も含め、ゆったりとした職場環境を構築していただけたらいいと考えます。
< 5 > リモート化
社業のリモート化検討は前項でしたが、ここではリモート市場のニーズを捕まえる、ということです。
巣ごもり消費はさまざまに取り上げられ、注目されています。
それによって移動が減ると、移動時に使用、消費されるものはニーズが減少します。
高性能なイヤホンなどは典型でしょうか。
本来、女子力を高めるような商品は「切実」だったのですが、外出を控えたり、高級レストランでデートという機会が減少すると、とうぜん化粧品などの消費量も落ちていかざるをえないでしょう。
ただ、減少する市場の商品に固執しつづけることは避けるべきですが、コア技術を握っているのなら、関わるメーカーが脱落していくなかで、無二の存在となって逆に利幅が向上する可能性もあります。
反対に、よくいわれるWi-Fiルータやビデオ会議の関連製品がよいとしても、その需要も一巡してしまえば落ち着きます。
もちろん、買い替えも含めた市場スケールは一回り大きくなりますので、意識しておいてわるいことはないとは思います。
ということで。
経済は、下手くそなダイエットのように、リバウンドを繰り返しながら復活していくことと思います。
もう、AIとロボットをフル活用したベーシックインカムの時代が来るべきなのではないか、というような厭世的な思想もじわりと拡大するでしょう。
ポストコロナ。これまでとは違う世界では、加工や部品製造を請け負っている製品の完成品が、繰り返される自粛社会でも広告を打ちやすい商品かどうか、なども意識しなければいけないかもしない。
グローバリズムは、いったんここで腰を折られ、情報やインフラ、セキュリティなどの観点から、高コストでも国内で完結コントロールするべきという意見を無視できなくなります。
国家同士の不信感や、あるいは交流から生まれるリスクにより、100年前なら世界大戦前夜の雰囲気になっていくところだったでしょう。
ただ、これからワクチンなどの開発で協力しあえれば、やはり国家間の紐帯は尊いものとして再認識されます。
なんとも不測な社会です。これも、抜け駆けでワクチンを独自開発し、世界での覇権支配のツールにしようと企んでいる国があるせいです。
こうした、不安定で、傷つきやすい社会情勢に、もっとも強いのはどの民族かといえば、それは明らかに日本人です。
どれだけ立てつづけに災害が襲っても、「仕方がない」「協力しあって頑張ろう」と、再び立ち上がってきたのは日本人です。
あきらめのよすぎる民族性が、よいほうにはたらく時代なのです。
私たちのビジネスも、とにかく現状を受け入れ、できること、やるべきこと、そして人の役に立つことを、今日も営々とやりつづけていくしかないのです。
以下は、個人的なことですので読まなくても大丈夫です。
弓削自身はどうなのか?
「そういうあんたはどうなの?」という疑問もあるかと思いますので、私自身の状況についても書いておきます。
まず、とうぜんのことながら講演・セミナー関連はすべて中止です。
2月19日に経営品質協議会様で講演させていただいたのを最後に、翌週の予定だった都内振興公社様の製造業対象のワークショップが中止となりましたので、けっきょく3ヵ月以上、講師らしいことをしていません。
講師仲間のなかには講師業のみで生活している人がいますので、その方たちはたいへんだと思います。
ただ弓削は、講師業は地域貢献で取り組んでおり、収入の比率としては3分の1以下です。
基本は個別の支援先企業様との年間契約です。
そして、ありがたいことに、今回の武漢ウイルス騒動で契約を終了するという会社様は1社もありませんでした (逆に1社、契約先が増えました)。
みなさま、ビデオ会議やメール・電話打ち合わせへの置き換え、対策を取った上でのリアル訪問などによって乗り切りつつあります(相手の会社のことを熟知しているので可能だったと思います)。
この期間中も、新製品をいくつもリリースしている会社さんがあり、あらためて(危機に強い会社なんだな)と感心したりもしました。
単発の個別コンサルティングでは、「時勢にあった新製品を出したい」という企業からの依頼が逆に増えました。
もともと、会議に参加してコンサルティングをするだけでなく、実際に企画やキャッチコピー、ツールをつくるところまで作業をするのが弓削の支援スタイルの特長です。
むしろ、毎日のように企画やプランニングの締め切りがあり、事務所での作業は多忙でした。
一昨日も、グッドデザイン賞の申請文書を徹夜でつくっていたくらいです。
このコラムも、考えていることをざくっと書いて、ほぼ毎日のように投稿ができ、月間ページビューも1万超となり、ありがたい限りです。
一方、展示会関連は、開催が延期・中止になるものばかりで、ブースの設計図を描いたりするプロデュース作業はありませんでした。
ただ、本年秋くらいから展示会は立ち直ります(?)ので、その展示会選択や戦略についてはいつも通り進行しています。
また、展示会活用セミナー講師の話はすでに大小いくつも進行しており、6月、7月からは、ほぼ平常運転に戻るのではないかと推測しています。
さて、緊急事態宣言下。
個人的にはインドア派ですので、あれやこれや充実して過ごしているのが実態です。
たまに電車に乗っても混雑は少なく、浅草周辺も観光客が溢れていた頃とは様変わりして平穏であり、むしろ快適なシーズンでした。
長文をお読みいただき、ありがとうございました。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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