生成AIにキャッチコピーを書いてもらう手順
キャッチコピーを書くときに生成AIを使えばカンタンなのではないか──
誰でも考えることですよね。現状は、「生成AIによるキャッチコピーでは反応率が12%下落した」という結果が出たかと思えば、「AIのキャッチコピーにより売上が7%向上」と報告されるなど、まだまだ揺れがある段階です。
それでも、プロンプト作文のスキルが向上すれば安定的によいパフォーマンスが提供されるのではないかと考えます。
また、単に生成AIに詳しいだけでは効果のあるキャッチコピーを引き出せないことは明らかです。やはり土台となる販促やマーケティングの知識があるほうが機能するはずです。
そこで、本記事ではどのような流れ、どのようなプロンプト(指示、質問文)を入力すると有用なキャッチコピーが生成できるかを幅広に解説します。
ちなみに、本文は生成AIによって書かれたものではありません。
目次
1 プロンプトにはこれを書く
2 実際に生成してもらいました
3 結果の修正やブラッシュアップをする
4 訴求すべきメリットやウリも教えてもらう
5 キャッチコピー以外も書いてもらう
6 評価と選択、そしてABテスト
7 SNSやレビューを参考にする
生成AIでキャッチコピーを書くには、あなた自身が考えて準備することと、生成AIに考えてもらうことがあります。
そして、シンプルにいえば、プロンプトは次のような文章を入力すればいいわけです。
「あなたはプロのコピーライターです。次の条件にあてはまるキャッチコピーを10本書いてください。 #条件 ………… 」
アタマの中身が整理されていればいいのですが、なかなかそうはいきませんので、まず条件となる要素から考えていきましょう。
1 プロンプトにはこれを書く
プロンプトに必要な要素
#商品名
#商品コンセプト 〜特長、メリット・ウリ
#顧客ターゲット
#文字数
#アウトプットするキャッチコピーの本数
#その他 禁止ワードなど
これらをプロンプトとして記入すれば、曲がりなりにもキャッチコピーの案が出てきます。
商品コンセプトは説明文だと思って、次のように考えてください。
「誰が、どんなとき、どう使い、どんなメリットがある商品」
実際に試してみましょう。使用する生成AIは5種類で、すべて無料のサービスです。それぞれの個性も確認しながら見ていきましょう。
●(例)ジャムの新製品を販促するキャッチコピーを書いてもらいましょう。
#商品名は、未発売の商品などの場合は情報漏洩の可能性もありますので、記入しないか、仮名にしておきましょう。
#商品コンセプト 旬のブルーベリーを砂糖を使用せずに仕上げたさっぱりとした味わい
砂糖不使用なのでダイエット中の人、生活習慣病の人も気にせず食べられる 果実の食感が楽しめる
#顧客ターゲット 糖質制限をしている人、健康志向の人、ダイエット中の人など
#文字数 15文字以内
#キャッチコピーの本数 10本
#その他 とくになし
以上のような内容からプロンプトを書くと、次のようになります。
「あなたはプロのコピーライターです。新製品のジャムのキャッチコピーを、下記の条件を守って書いてください。
商品コンセプトは、「旬のブルーベリーを、砂糖不使用で仕上げたさっぱり味のジャム。果実の食感が楽しめることも特長」
想定ターゲットは、ダイエット中の人、生活習慣病の人、糖質制限をしている人、健康志向の人、ダイエット中の人など
文字数は15字以内で書いてください。
キャッチコピーは10本考えてください。」
2 実際に生成してもらいました
では、上記のプロンプトによってどんなアウトプットが出たでしょうか。
7種類の生成AIに実際に書いてもらった文章で比較していきます。
まずはchatGPT4oです。
『もちろんです。以下に、商品コンセプトとターゲットに合わせたジャムのキャッチコピーを15字以内で提案します。
1. **「砂糖不使用のさっぱりブルーベリー」**
2. **「果実感たっぷり砂糖ゼロジャム」**
3. **「ダイエットに最適!果実の甘さ」**
4. **「ブルーベリーの自然な甘み」**
5. **「健康志向のブルーベリージャム」**
6. **「砂糖ゼロで楽しむ果実の味」**
7. **「さっぱりヘルシーブルーベリー」**
8. **「糖質制限にぴったりのジャム」**
9. **「果実そのまま!砂糖不使用」**
10. **「ブルーベリー本来の甘さを」**
これらのキャッチコピーは、商品の特長とターゲット層のニーズを考慮して作成しています。』
▶︎感想/評価 : それらしい回答が出ていますね。可もなく、不可もなく。
「さっぱりヘルシー、ブルーベリー」は韻を踏んでいるので、動画広告(音声)向きですね。
では、次はGEMINIです。
『旬のブルーベリー、砂糖不使用でヘルシージャム!
1. 罪悪感ゼロ!ブルーベリーの甘酸っぱさ
2. 果実たっぷり!ブルーベリーの食感を楽しむ
3. 糖質オフ!ブルーベリーの甘み満載
4. ダイエット中のおやつに!ブルーベリーの贅沢ジャム
5. 健康志向のあなたへ!ブルーベリーの自然な甘み
6. 生活習慣病予防に!ブルーベリーの栄養満点
7. 罪悪感なし!ブルーベリーの甘酸っぱさ
8. 糖質制限中も安心!ブルーベリーの自然な甘み
9. 果実ゴロゴロ!ブルーベリーの贅沢ジャム
10. 旬のブルーベリーを凝縮!砂糖不使用ジャム
ポイント
・ターゲット層が気になる「砂糖不使用」「糖質オフ」「ダイエット中」「健康志向」などのキーワードを盛り込みました。
・ブルーベリーの美味しさを表現するために、「甘酸っぱさ」「果実たっぷり」「贅沢ジャム」などの表現を使用しました。
・15字以内に収まるように、簡潔で分かりやすいキャッチコピーを心がけました。
その他
・ターゲット層や商品の特徴に合わせて、キャッチコピーを調整することができます。
・サブタイトルや商品説明文なども合わせて考えることで、より効果的な宣伝ができます。
これらのキャッチコピーを参考に、新製品のジャムの魅力を効果的に伝えられるキャッチコピーを考えてみてください。
ご参考になりましたでしょうか。』
▶︎感想/評価 : いかがでしょうか。「15字以内に収まるように簡潔で…」と書いていますが、文字数はかなりオーバーしています。
「罪悪感ゼロ」や「果実ゴロゴロ」などはとても人間的な言葉遣いですね。
次は、Claude3.5です。
『はい、ご要望の条件に基づいて、新製品のジャムのキャッチコピーを10本考えました。各案とも15字以内で、商品コンセプトと想定ターゲットを意識しています。
▶︎感想/評価 : 順当な感じですね。「健康を塗る」という例えがユニークすぎます。
次はCopilotです。
『了解しました!以下のキャッチコピーを提案します:
1「砂糖ゼロ、果実の恵み」
2「ブルーベリーの自然な甘さ」
3「健康志向の新定番」
4「果実感たっぷり、砂糖不使用」
5「ダイエットに最適なジャム」
6「自然の甘さ、健康の味」
7「砂糖なしで楽しむ果実」
8「ブルーベリーの本当の味」
9「糖質制限にぴったり」
10「果実の食感、砂糖ゼロ」
これらのキャッチコピーが、商品の魅力を効果的に伝える手助けになれば幸いです。どれか気に入ったものはありますか?また、他にもご要望があれば教えてください!』
▶︎感想/評価 : 自然な日本語で書かれていますね。キャッチコピーは、ときに引っかかりのある表現を求められますので、そうした指定は後段でおこなってみましょう。
次はgroqです。 ※この項目と次項目は2024/8/23に追加しました
- サラリと味わうブルーベリー:旬のブルーベリーを使用した、砂糖不使用のジャム。
- フレッシュな味わい:新鮮なブルーベリーを使用した、果実の食感が楽しめるジャム。
- 健康に優しいジャム:砂糖不使用、低カロリーのジャム。健康志向の人々に人気。
- ブルーベリーの純情:旬のブルーベリーを使用した、砂糖不使用のジャム。果実の食感が楽しめる。
- ダイエット中でもOK:砂糖不使用、低カロリーのジャム。ダイエット中の人々に人気。
- 自然の味を味わう:新鮮なブルーベリーを使用した、砂糖不使用のジャム。果実の食感が楽しめる。
- 健康に優しい食生活:砂糖不使用、低カロリーのジャム。健康志向の人々に人気。
- ブルーベリーの甘さを味わう:旬のブルーベリーを使用した、砂糖不使用のジャム。果実の食感が楽しめる。
- フレッシュな味わいを味わう:新鮮なブルーベリーを使用した、砂糖不使用のジャム。果実の食感が楽しめる。
- 健康に優しいジャムを味わう:砂糖不使用、低カロリーのジャム。健康志向の人々に人気。
▶︎感想/評価 :キャッチコピーというより、キーワードとその説明になっていますね。ちょっと理解できていないようです。
次は国産の生成AI、ELYZA LLMです。
『以下は、指定された条件に基づいて作成したキャッチコピーの10本です。
-
「さっぱりブルーベリー、砂糖ゼロの贅沢」
-
「果実の食感、砂糖不使用の新ジャム」
-
「ブルーベリーの旬を、砂糖ゼロで味わう」
-
「さっぱり、すっきり、ブルーベリーの新味」
-
「砂糖不使用、ブルーベリーの自然の味」
-
「ブルーベリーの食感、砂糖ゼロの新感覚」
-
「旬のブルーベリー、砂糖不使用の贅沢」
-
「ブルーベリーの新ジャム、砂糖ゼロの挑戦」
-
「さっぱり、すっきり、ブルーベリーの新ジャム」
-
「ブルーベリーの旬を、砂糖ゼロで味わう」』
▶︎感想/評価 :さすがは国産AI、日本語が自然ですね。
ただ、類似というかバリエーションの案が散見されます。ま、これも人間のコピーライターっぽいとも言えますが(1番目と4番目と9番目など。 3番目と10番目は同一)。
そして、最後はPerplexityです。
『1. 果実の贅沢、糖なし
2. 砂糖ゼロの贅沢ジャム
3. 果実そのまま、糖質オフ
4. 健康派の至福ジャム
5. 糖質ゼロの果実の宝石
6. 自然の甘さ、贅沢ジャム
7. 糖質オフで果実を堪能
8. 果実の食感、糖質ゼロ
9. 健康を塗る、果実ジャム
10. 砂糖なしの果実の宴
これらのキャッチコピーは、商品の特徴である砂糖不使用、さっぱりした味わい、果実の食感を強調しつつ、健康志向やダイエット中の人々をターゲットにしています。15字以内で簡潔に商品の魅力を伝えることを心がけました。』
▶︎感想/評価 : 15字以内という指定をきちんと守って苦労している印象ですね。何度か生成する場合は「18字以内で」など、少し緩和した条件でも考えてもらうとよいかもしれませんね。
3 結果の修正やブラッシュアップをする方法
さぁ、以上の実例で、あなたがいちばん使えると感じたAIはどれだったでしょうか。あなたの感性や好み、そして商材のカテゴリーとの相性もありますので、各サービスを何度も試して優先使用するサービスを決めたり、課金したりするのもいいですね。
条件が守られなかったり、思わぬ抜けや穴が見つかった場合は、そこを埋める指示を出します。例えば、「〜に留意して修正してください」のように。
また、アウトプットされたキャッチコピーの“性質”がよくないときは、望ましい表現傾向を条件として指定することが有効です。次に例を挙げます。
「インパクトのある表現を」「語感のよい」「説得力がある」「感情に訴える」「刺激的な」など
考慮して欲しい前提情報がある場合は、これをインプットして生成してもらいます。例えば、「〜の商品が人気です」「受験シーズンに向けて広告を出稿します」などです。
さらに、異なる方向性での生成をリクエストする際は、例えば「造語を使って書いて」や「文学的な表現で書いて」、「ブレット形式(箇条書き)で出して」などのリクエストを試してみてください。
このように、満足のいく結果に近づくよう、試行錯誤を続ていきます。
キャッチコピーの表現パターンは、拙著「キャッチコピーの極意」に掲載している通り31種ありますが、いずれかの方向性を指定してキャッチコピーを生成してもらうのも確度を高める一つの方法です。
また、「売り方」とはキャッチコピーの表現方向性そのものであることも少なくありません。生成AIに「売り方」を訊き、その売り方に従ってキャッチコピーを書いてもらう指示を出すのも実践的といえます。
4 訴求すべきメリットやウリも書いてもらう
上記のように、プロンプト文や記入要素がサクサク考えられるならよいですが、そうではないケース、または根底から生成AIに支援してもらったほうがいい場合もあります。そのときは、ターゲットやウリ、最適な流通チャネル、関連キーワードなどから考えてもらいましょう。
商品の「特長」はすぐに書き出せても、それによってもたらされる顧客のメリット、便利さ、おいしさ、つまり購入や発注の決め手を特定するのに悩むこともあります。
そこで、商品の特長をプロンプトとして入力し、ここも生成AIに頼ってみましょう。次のように訊くのです。
「これらの特長から導き出される、顧客にとってのメリットは何ですか?」
また、次のような方向からの訊き方を試すのもいいでしょう。
「こうした商品を必要とするターゲットの悩みや課題は何ですか?」
そのほかにも、ターゲットを教えてもらうこともできます。この場合は次のようになります。
「この特長を持つ商品の、想定されるターゲットは誰ですか?」
こうして個別の要素を抽出できたら、次のようなプロンプトを書くこともできます。
「(こうしたターゲット)に向けて(このようなメリット)を訴求するキャッチコピーを書いてください」
さらに、見込み客に刺さる“関連キーワード”を生成AIに出してもらうことも有効です。よい関連キーワードが見つかったなら、キャッチコピー案をブラッシュアップしていく段階で、「〇〇〇というキーワードを含めてキャッチコピーを書いてください」と入力して生成してもらうのです。
5 キャッチコピー以外も書いてもらう
制作物のテキスト表現は、1行のキャッチコピーだけではありません。
説明のボディコピーも必要ですし、LP(ランディングページ)であれば、長文のセールスレター的な文章を書かなければならないときもあります。
■必要な宣伝コピー文の例
・2行のサブキャッチ(見出し、リード文)
・120字ていどの説明ボディコピー
・オファーの告知文
・クロージング(成約)文
・短く定義する商品ショルダー
・ウェブページやLP(ランディング・ページ)のセールスレターなど
ボディコピーやセールスレターなど長めの文章の場合は、文章構成の流れを指定してあげるのも一つの方法です。構成にはPREPやPASONA、QUEST、CREMAなどのフレームがありますので、適宜、使い分けてください。
1 PASONA 問題の提起+危機感をあおる+解決策の提示+絞り込み・限定+行動の呼びかけ
2 QUEST 対象者の絞り込み+悩みへの共感+解決策の教育・啓蒙+便益による欲求の刺激+顧客への転化
3 CREMA 結果の提示+理由+根拠となる証拠+達成する手法+とるべき行動
6 評価と選択、そしてABテスト
キャッチコピーを評価し、どれを選択するかも重要です。ただ、現段階では評価や選択においてAIを頼ることはむずかしいので、ここは人間の目でおこなうほうがいいでしょう。
キャッチコピーの選択法は次のような項目を参考にしてください。
●キャッチコピーを選ぶ7つの視点
①買う理由が生まれるか
②意味が伝わるか
③具体的か
④個性的で記憶に残るか
⑤短いか、読みやすいか
⑥語感がよいか
⑦好感が持てるか
さらに、ABテストをおこなって実際のCVR(成約率)、CTR(クリック率)を算出し、そのデータに従って取捨選択していくとよいでしょう。
ABテストとは、キャッチコピーのA案とB案を掲載した2種類のランディングページをランダムに表示させ、どちらのキャッチコピーが購入や資料請求などに結びついたかをデータで比べたりするものです。
かつては「これが効くと思う」というカン頼りでしたが、いまは余談を抱くことなくデータに従って選択するなど、謙虚な姿勢が求められます。
7 SNSやレビューを参考にする
いまやマーケティング計画にSNSの存在を抜きに語ることはできない時代になりました。X(旧ツイッター)やインスタなどを使って“ソーシャル・リスニング”をすることも有効です。
※ソーシャルリスニングとは、SNSメディア上で消費者が投稿してる情報を分析し、マーケティング戦略立案に活かすこと。
ソーシャルリスニングについては、多くのIT系マーケティング企業が収集・分析ツールやサービスを提供していますが、生成AIを活用すれば自社のなかで小規模に実践することも可能です。
例えば、自社商品や同カテゴリーの商品についてSNSや口コミサイトに投稿された大量のレビューをGoogleのnotebookLMに投入しておいて、その傾向や事実を質問するという使い方ができます。
また、XやインスタなどSNSでの投稿内容を定点観測し、それらを投入して傾向を訊くという方法もよいと思います。
以上、生成AIを使ってキャッチコピーを書く方法、手順について書きました。少々、長文になりましたが、ぜひ参考にしてみてください。
たとえ高名な(高額な!)コピーライターに依頼したとしても、必ず素晴らしいキャッチコピーが納品されるわけではありません。それならば、賢い生成AIとうまく付き合うことで、自身も学習しながら有用なキャッチコピーをアウトプットする時間をとるほうが、将来的にも有意義なのではないでしょうか。
▶︎▶︎生成AIの全般な活用法について書いた記事はこちらから。
製造業マーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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