企業スローガンのカン違い
中小企業なのに、大企業病にかかっているような企業スローガンをつくってしまった会社さんのカン違い、そして企業スローガンと経営理念の違いについて書いています。
3●多くの会社が企業スローガンを間違えている
前記事(企業スローガンの役割を考える)で見ました通り、
・大企業のスローガンは夢やイメージを掲げるもの
・中小企業のスローガンは製品や技術の販売促進となるキャッチコピー
絵に描いたモチと、あんころモチくらいの違いがありますね。
それゆえ、中小企業にとって企業スローガンはなくてはならないのです。
もちろん、そうではない実例もあります。
✳︎カッコよすぎる中小企業の企業スローガン
人と技術の未来をひらく 日新電機(株)
一歩先へ、環境への気遣い (株)ジェルシステム
共に、未来へ。 ヤマザキマザック株式会社
チャレンジの中に、チェンジがある。栗本鐵工所
化学でもっといいこと。 大阪曹達
なんだか大企業みたいですね。というか、大企業病。
こうした、抽象的で、間違っていないけれど差別化に乏しいスローガン、キャッチコピーを、コピーライター業界では「完全表現」と呼びます。
完全表現は私たちが書いてはいけない1文であり、イメージや雰囲気だけでは検索や引き合いに結びつくことは望めませんので、戦術としては避けるべきでしょう。
一方、生まれたてのITベンチャーなどによく見られるのが、夢や世界を語るような企業スローガン。
「未来をデザインする」とか、「出る釘になろう」のような感じのメッセージですね。
繰り返しになりますが、中小製造業にとって、企業スローガンとはイメージ訴求のためのものではありません。
具体的な強みを伝える、地に足の着いた販売促進のキャッチコピーであるべきなのです。
何ができる会社か、どんなソリューションを提供しているのか、他社に負けない付加価値は何か、を明快に打ち出し、一人でも多くの人にコミュニケーションすることが役割です。
このように考えてみると、なにも大上段に振りかぶって高尚なテーマを探す必要はなさそうです。
そうした意味でも、ぜひ企業スローガンの策定と活用を検討してみてください。
4●企業スローガンと経営理念は違う
意識高い系の起業家から語られる企業スローガンというものもあります。
社長自身の夢や目標、到達点など。あるいは、社員にどの方向を向いてほしいのかを指し示す指針など。
内容によっては結構なのですが、やはりそれは「経営理念」でしょうね。
「経営」上の話ですから、社外のお客様に聞かせる話ではありません。
社内の奥の、オフィスの壁に掲げておけばよいのです。
たとえば、カシオ計算機の経営理念をご存じでしょうか。
「創造と貢献」です。
ご存じの方は少ないと思います。
カシオの会社案内や入社案内をすみずみまで読むと出てきます。
創造と貢献──おおげさな言葉でありながら、これまでに同社が開発し、社会へ送り出してきた製品群の価値を考えると、とうぜんの概念として腑に落ちます。
それでも、カシオはこの言葉を企業スローガンとして社外に声高に喧伝することはありません。
それが、この言葉を組織内に向けた行動指針と決めて掲げてきた同社の矜持であるといえるでしょう。
カシオ計算機は私の大好きな企業の一つですが、もう一社、サイゼリヤの経営理念をご紹介します。
古今東西、もっとも納得できたのがサイゼリヤの経営理念です。
「人のため・正しく・仲良く」
うまく言えませんが、企業体として、お客様にサービスする組織として、これ以上でも以下でもない、決定的な真理が含まれているような気がしてならないのです。
とはいえ、こちらも経営理念。企業スローガンとは違います。
次回は第3回として、企業スローガンの書き方、つくり方についてお伝えします。
ぜひ、チェックしてみてください。
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コピーライター、製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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