ものづくり企業は、マーケティングコンサルタントに依頼しようとは思わない
なぜなら、よい技術、製品であれば、だまっていても売れていくはずだから。
あるいは、高度な技術の意味を説明しても理解してもらえないので、結局は自分たちでコトバを考えるしかないと知っているから。
そして、なにより大きいのは、コンサル料を支払っても割が合うほど利幅のとれるビジネスではないから──ではないでしょうか。
そのうえ、製造業のマーケティングには、やることが多すぎます。
まず新技術・製品を開発してプロダクトデザインを起こし、ネーミングを決める。
販路開拓を考えてカタログや営業資料を作成し、ウェブサイトにも反映してプレスリリースを出し、展示会にも出展する。
さらに顧客の声を聞いて改善やアフターケアもおこない、人材採用を意識してブランディングにも気を配る…。
ものづくり企業は、川上から川下に向かって長い、長い旅をするのです。
これらのマーケティング活動を効果的に、しかも最善手を打っていくには、本当は専門的かつ広範な知見が必要です。
そのため、大手コンサルファームに依頼する会社もあります。
彼らはチーム体制で担当してくれますが、それでも専門性が満たされず、その割には高コストになってしまうとの声もあります。
しかし、もっと問題なのは、大手や個人を問わず、マーケティングコンサルタントはほとんどが営業マン出身だという事実です。
つまり、仮にすぐれた戦略を立案できたとしても、実際にお客様に伝えるキャッチコピーやデザイン制作の段階は、どうしても外部発注になります。
そこで、戦略の意図が正しく表現されず、ズレたり、曲がったままカタチになってしまうのです。
ここが、いちばん肝心なポイントであることは明白なのに、です。
私は経営者ではありますが、コピーライター出身であり、長期にわたるデザインのディレクション経験を持っています。
そのため、支援先企業の制作物は、1行のテキストまで、ときには問い合わせメールへの回答にいたるまで、責任を負って書いています。
ビジュアルデザインも、一流代理店と遜色のない表現を提供しています。
なにより、一つひとつのコミュニケーションの場が重要であると知っているからです。
これは、共に大手企業の仕事をしてきたデザイナーやカメラマン、イラストレーターなどのクリエイターたちが、中小企業の成長のために町の印刷屋さん価格でブレーンとして協力してくれていることも大きいといえます。
そのため、ムリのない適正コストで支援することが可能になっているのです。
くわえて、製造業に関しては工業、電気、食品、化粧品、化学、そして建築など、いずれの業種でも技術を理解している専門性も重要であると考えています。
──すぐれた技術を持つものづくり企業にこそ、そのマーケティング活動の長い旅に寄り添い、徹底して自社の利益を計っていく専門家が必要です。
それでこそ、市場をしっかりグリップすることができ、自社の分野専門性の壁を越えて成長していけるのです。
なぜ、製造業に特化しているのか
私はクリエイター時代、幸運にも非常に多くの大手メーカーさんからマーケティング関連の仕事をいただくことができました。
そのおかげで、さまざまな業界、分野での高度技術を理解する経験を積むことができました。
とりわけ、ユニークな製品で知られるC社の会社案内、入社案内を連年で担当した際、担当部長のオリエンテーションと薫陶を受け、ものづくりのすばらしさを知りました。
日本は本来、「ものづくり立国」の国です。
しかし、途上国の激しい追い上げや先進国の標準化戦略の板挟みにあって、いまは苦しい立場に。
それでも、国内の中小企業が有する技術はすばらしく、それは人びとの生活を変えるインパクトを持つものです。
ICTおよびIoT技術などが進展し、多様なサービス産業が生まれても、結局のところ社会を変えるのはカタチある「モノ」。
IoT技術はThing(モノ)のためにあるのであり、サービス業も流通業も、モノがあるから成立します。
つまり、世界を変革するインパクトはモノからもたらされるのです。
ゼロから1を生む価値を創造しえるのも、メーカーだからこそ。
ムリといわれていた商品開発に成功したときの感動を、達成感を、充実を、金融業で味わうことができるでしょうか。
私一人くらい、中小製造業のマーケティング活動支援というニッチな領域に特化した人間がいても、よいと思うのです。