顕在化するチャイナリスク 3
では、具体的にはどんなリスクがあなたの会社を待ち受けているのでしょう。
ふつうは為替リスクや治安の悪さ、物価変動などが外国でビジネスすることのリスクなのですが、かの国はそれだけではありません。
■チャイナリスクまとめ
・商品、ビジネスモデルをパクられる
いちばん一般的なパターンですね。カタチあるものは、現品からデッドコピーで金型をつくられ、大量生産されます。それも、品質が劣るため、そのクレームは元の会社にきます。
・知財を剽窃、先に出願される
[無印良品]が無関係な中国企業によって先に商標登録され、取り消し裁判にも敗訴したのは有名な事例。日本の主な地名やブランド名、有名人名はことごとく登録されています。
・人材を引き抜かれる
日本人の技術をパクる場合、確実にパクるためには技術者ごと盗んでしまうのが常道。技術移転が済めば、お払い箱です。
・金型を盗まれる
金型は技術の肝であるケースもあります。しかし、中国に進出した日本企業が秘匿していれば盗むことが困難です。そこで中国政府は金型の重量に応じて過酷な関税を設定。それを払いたくない(無邪気な)日本企業は図面だけを持参して中国内企業に金型を発注。かくして金型技術が流出します。
・技術開示を条件にされる
中国に進出したり、合弁企業をつくる場合、技術を政府派遣の役人に開示することが義務付けられます。これが政府による、技術流出の根幹的政策です。
・反日政策に転換される
ときの政権によって反日政策が強められると、以前に起きたような反日暴動、工場襲撃、不買運動、コンテナが止められる、などの弊害が発生します。渡航すらできなくなることもありえます。
逆に、日本への中国人観光客をぴたりと止めるというカードも、彼らは持っています。
・売掛金が支払われない
基本的に請求書は無視するのがルールです。おとなしく請求書だけ出していても一向に支払われないことがふつうです。売掛金回収にかける労力が高くつき、儲からないことにもなります。そのため、取引は同時交換や前払いが必要です。
・定期的に新型病原菌が発生する
いうまでもなく、SARS、MERS、鳥インフルエンザ、そして新型コロナウィルスと、数年に1回は新たな病原菌が生成されています。今回の罹患者数を見ても、韓国、イラン、イタリア、そして日本と、中国への依存度が高い国に大きな被害が広がっていると考えざるをえません。
では、ひと口に技術を盗まれるといっても、どのような手口があるのか。
これを知っていなければ防ぐこともできません。
■技術を盗まれる手口まとめ
・インターネット経由でハッキングされる
これは日々、行われています。日本は対抗措置をとれないのでやられるばかり。防御は攻撃よりむずかしいのです。
・リバースエンジニアリングされる
特許を侵害されなければ、これはやむをえませんね。日本企業なども行っている手法です。しかし、特許侵害していても中国国内だけで販売されるなら許されてしまいます。
(リバースエンジニアリングとは、市販の製品を分解され、研究・摸倣されることです)
・取引を持ちかけられ情報開示したあとに破談になる
取り込み詐欺の技術版です。良い条件を持ちかけられ、時間をかけて信頼を築き、そして信用につけ込んで技術の説明や図面を引き出すのです。
・打ち合わせに呼び出されカバンを置き引きされる
原始的ですが、けっこう件数が多いといわれています。待ち合わせ場所で気を取られることを仕掛け、そのスキに持ち去ります。ホワイトカラーの人には手も足も出ませんね。
・ノートパソコンの画面を盗み見される、撮影される
前項と似ており、これも原始的。望遠レンズでパスワード入力ごと録画されたらかないませんよね。
・配布資料のUSBから流出する
学会やシンポジウム、セミナーなどで親切に配布された資料に「データはこちらに」のようにUSBメモリが入っています。これを参加者が自分のパソコンに差すと、隠れたソフトが起動し、データが流出するという手口です。
・監視カメラ経由でホストに侵入する
監視カメラのメーカーには中国企業がたくさんあります。社内そこかしこの監視映像が盗まれるだけなら被害も限定的なのですが、インストールされた監視カメラの管理ソフトが企業内ネットに侵入し、クリティカルなデータを盗み出すので大ごとになります。
・ビデオ会議システム経由で盗聴される
ビデオ会議システムのzoomは米国に本社を置いていますが、社長は中国人です。会議の内容は、すべて北京に送られ、監視され、ストレージされているといわれます。
実際に、zoomを使って「米国内の何ヵ所か」をつなぎ、天安門事件について語っていた会議が突然シャットダウンされ、参加者のアカウントが削除されるという事件がありました。
・担当者を買収(脅迫)される
おカネを渡して技術情報を要求するのなら断れますが、複合的にはめ込まれ、断れなくしてから要求するのです。ハニートラップなども駆使して。政治家や官僚もやられています。
大手通信会社の人も、「ファイヤウォールを構築しても、結局は人が持ち出すので…」と話していました。
・会社に侵入してデータを持ち出される
物理的に侵入され盗み出される、いわゆる産業スパイの手口です。これなら防ぎようもあるはずですが、まだまだワキの甘い会社が多いですね。スパイは外部から侵入するより、社員として潜り込んでいるケースが多いでしょう。
・会社ごと買収される
あらがいがたいです。ただし、身売りしなければならない状況を醸成された挙句、となるとコワイですね。
・家電にカメラ・マイクがついていてダダ漏れする
中国の影響が強いある台湾企業に買収された日本の家電メーカーでは、冷蔵庫や電子レンジにもカメラを搭載するように商品開発が進められているといいます。
現場の担当者が「この家電になぜカメラが必要なのですか?」と訊くと、親会社(買収企業)の人間が「その理由は、あなたたちで考えてください」と言うというのです。
パソコンのカメラとマイクから漏れるのは常識ですが、いまや脱衣所の洗濯機も信用できませんね。
「そんなことある?」と思いましたか。
中国には法律があり、中国系の人・企業は、中国政府から要請があった場合は情報提供しなければならない、と規定されています。
これに背くと、本人や企業が完全に在米国であっても、その親兄弟や親せきが中国内にいればマズいことになるため、政府の言うことを聞かざるを得ないのです。
その他、チャイナリスクまとめでも挙げた項目がありますね。
・技術者をヘッドハンティングして流出させる
・カタログ、現品をデッドコピーされる
・中国内に工場をつくるなら情報開示せよといわれる
ということで、いずれに限らず、日本人以外とビジネスをするのは相当な覚悟が必要ということですね。(あっ、海外で出会った日本人による詐欺に遭うというケースも多いのでご注意を)
現状のオススメは、ベトナム、タイ、マレーシア、フィリピンでしょうかね。。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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