ものづくり企業の社名 その3
ものづくり企業の社名をどうするか、の第3回目です。
前々回までの記事で、社名の考え方として「創業者の名前からつける」を挙げましたが、視野の広い起業家ほど自身の名前をつけることを避けたがります。
個人商店のようにはしたくない、ワンマン経営と見られたくない…。
その気持ち、よくわかります。
本田技研の創業者、本田宗一郎氏はソニーの社名を見て、うらやましいと言ったとか。
ところが、アジアの新興国で店頭を見ていると、HENDAとか、Makoshitaなど、日本人名を装ったブランドの多いこと、多いこと。
しかも、それらは日本の会社ではない……!?
そうです。
日本人名らしい社名は、「品質と信頼の証し」ともいうべき響きをもつのです。
ですから、これから海外でも勝負したいと考えるなら、堂々と日本らしさを前面に出してもいいわけです。
逆に、英語でつけられた社名を見て、(このまま海外に出れば首を傾げられるな)と思われるケースは少なくありません。
ということで、今回は社名をつける上で注意するべきポイントについて書きます。(2019年5月11日の投稿とも重なりますので、併せてご覧ください)
■注意・確認するべきポイント
●ネット検索で上位表示されるか
考えた社名案を、試しにGoogle検索してみてください。
同様の社名がずらりと結果ページに並ぶようですと、お客様が検索したときにも馬群に消えてしまうことになります。
基本的に、同一住所でなければ同一・類似社名を商号登記することができるルールですが、検索されたときに探しやすいかどうかは、ビジネスの実務に関わってくる重大事です。
(三和なんとか、とかユタカ産業なんていう社名、全国にいくつあることでしょうか)
また、漢字が読めない、何通りも読み方がある、社名もNGです。
読めなければ記憶されず、入力・検索しづらく、そのうちに忘れられてしまいます。
●有名企業と類似はないか
有名企業と同一・類似社名でも商号登記が認められることは、かつてはよくありました。
例) トヨタ自動車←→豊田商事
事業分野が異なっていればいいのではないか、と考える人もいるかもしれませんが、商号や商標法上はよくても、不正競争防止法に抵触すると判断されれば提訴されることもあります。
また、銀行ではないのに[銀行]などは使えません。
●ドメインのURLがとれるか
商品ネーミングでも同様ですが、社名ではとくに社名+.comやco.jpがとれることが条件です。
ありがちな社名ですと、.netや.bizしかとれず、ちょっとマイナーで恥ずかしい感じになってしまいます。
●外国語で悪い意味はないか
少なくとも英語、スペイン語、中国語はあたっておきたいところです。
また、世界へ販売していくのも当たり前の時代ですから、英語表記をどうするかも考えておいたほうがよいでしょう。
石油会社のエクソンは、最初は社名を[エンコ]と決めていましたが、日本語でクルマの故障を意味する言葉であることを知って、急きょ変更しました。
旧松下電産が国内では[ナショナル]を使い、海外では主に[パナソニック]を使わざるを得なかったのは、英語圏ではナショナル(国民の)は一般名称であり、ブランド・ネーミングとしては商標登録できなかったからです。
いまはパナソニックに統一されましたが、その意味するところは「すべての音響」。
オーディオなど、黒もの家電を前提としたネーミングですから、社業との適合に疑問符がつきますね。
●読みやすいか、発音しやすいか
社員が電話を受けたときに言いづらい社名、長すぎる社名は早晩、変更となるかもしれません。
かくいう私も、最近では減りましたが「弓削です」と電話などで名乗ると、「はっ? (+井出さんですか?)」と聞き返されていました。
●印象に残るか、インパクトあるか
東大阪のハードロック工業は、ゆるまないネジで有名ですが、知らない人には「ロックな会社?」と受け止められることも。
しかし、製品の中身を知れば、「ゆるまない」のでハードロックなんだな、と納得します。
さて、印象に残る名称であれば、少々バカバカしくても記憶に残ったもんがちなのですが、こと社名になりますと、ずうっとついて回りますので、ほどほどにしたほうがよいかもしれません。
●まえ株か、あと株か
株式会社設立の資本金も少しですみますから、まぁ株式会社にする人が多いでしょう。また、最近は合同会社なんていうのもよく聞くようになりました。
これらを社名の前後につけるのですが、コミュニケーション上の細かいことをいえば、あと株のほうが有利です。
グーグルの検索エンジンは文字列の中で、左側にあるワードほど重みをつけてみます。
生身の人間に名刺を渡すときでも、“株式会社”のうしろにあるよりも前にあるほうが、さっと読んでもらえるというものです。
●由来に「なるほど」があるか
ユニークな社名をつけた場合、社名の由来を訊かれることがあります。
その答が「いやー、なんとなく」とか、「響きがいいかなと思いまして」では頼りないですね。
あとづけでもいいので(!?)、訊いた人が友人に語りたくなるようなストーリーや出典があるとブランディング上も(SNS的にも)効果的です。
第4回へつづく。最終回です。
ものづくり企業のマーケティングコンサルタント、弓削徹でした。
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