有効なマーケティング調査とは<2>
有効なマーケティング調査手法の後編です。
まずはマクラです。
住宅展示場などに出かけるとアンケート用紙を渡されたりします。
そんなとき、あなたもテキトーに記入しているのではないでしょうか?
あるリフォーム業者さんは、初回の反応やアンケート回答内容を次のように判断しています。
(1)「前向きな反応をするお客様」→ 発注する気あり
(しかし、他社にも見積もりを依頼しているので不確実)
(2)「興味を示すお客様」→ 時間をかけると(1)へ移行する可能性あり
(しかし、やはり発注時は他社からも見積もりをとる)
(3)「反応が薄いお客様」→ 売り込まれたくないので興味がないように装っている場合多し
(つまり、発注するときは発注する、もちろん本当にその気がなくなることもある)
結局、お客が何を言おうと、どんな回答をしようと、その後の対応を見ていくしか真実はわからないということ。
さすがは研ぎ澄まされた現場感覚ですね。
ビッグデータばりのサンプル数を集められない中小企業にとって、アンケートとは予断を抱くことのできない、どっちつかずの数字なのかもしれません。
では、役立つマーケティング調査の後半を見ていきましょう。
(3)テストマーケティング
・エリア限定販売
実際に商品を発売してしまって、どれだけ売れるかを試してしまうのがテストマーケティングです。
大手企業はエリアを限定して発売し、テレビCMまで放映して調査をするケースもありました。
このやり方なら、見栄もうそもなく、顧客が実際に財布を開くかどうかがよくわかります。
選ばれるエリアは、新しもの好きで、年齢構成分布が全国平均に近い地域となります。
よく実施されたのが、静岡や広島です。
それで販売動向が芳しくなければ、あっさりと発売を中止してしまうわけです。
ただ、ある意味、これは資金力のある大企業の手法ですし、最近は関東地区先行発売で様子を見る、というパターンが増えています。
ひとつ、ふたつ、事例を書きます。
まずは理系の経営者で知られる、子供服SPAの西松屋。
西松屋は、デザインの決定や生産計画に際し、どのようにマーケティング調査を活用しているのか。
ちなみに、ふつうのアパレルなら、シーズンがはじまる前に“コレクション”をデザインし、一部のお客様がそれを気に入るかどうかを検証し、それにもとづいて生産モデルと数量を決定したりします。
西松屋は少し違う手法をとります。
まず、一定量を生産してしまい、夏物なら沖縄の店舗で(冬物は北海道から)販売をはじめて数字を注視します。
そして、売れ行きのよかったデザインを大量生産し、売れなかったデザインは少量生産にするか、中止にするのです。
何がどれだけ売れたかの全データ、いわばビッグデータをにらんでの方針決定といえるでしょうか。
一方、ファストファッションの雄、ZARAの場合はこうです。
まず、日頃から顧客の好みを理解する努力をする。
そして、デザインを起こして製造します。それだけ。
さすがは“ファスト”ファッションですね。
西松屋もZARAも共通しているのは、机上のマーケティング調査はしないこと、です。
また、実際に発売するところまで行かない手法に「モニター調査」があります。
自前のリストやウェブで募った顧客に、割引価格や無料で商品を使用してもらい、アンケートに答えてもらうなど。
この場合も、できれば料金を払ってくれる人の声が聞きたいところです。
・LP+リスティング広告
こちらも、実際に販売するやり方です。
商品を紹介するLP(ランディングページ)をつくり、そこへ着地するリスティング広告を打ちます。
広告費は1万円ていどの少額とし、どれくらい売れるのか反応率のデータをとります。
結果がよければ生産も販売も大々的に展開していく、結果がわるければ商品企画やキャッチコピーを考え直す、というわけです。
(4)アイトラッキング
これは、調査協力者(被験者)に小型カメラを搭載したメガネのような機器をつけてもらい、眼球の動きから視線を記録するというもの。
たとえば、ウェブサイトを閲覧するときに、どこをどんな順番で見て、どれだけ長く見つめているか、を調査するのです。
よく知られているのは、自動販売機を前にしたユーザーがどこをどう見ているかを調べた事例です。
それまでは、左上から順番にZ型で見ていると言われていました。
ところが、アイトラッキング調査をしたところ、意外に左下の商品を見ていることがわかりしました。
そこで、注力している缶コーヒーを左下に設置したところ、売上が数十%伸びたのです。
アイトラッキング調査のコストは、だんだん下がってきていますので、ウェブサイトのレイアウトなどにいかしてみてはいかがでしょうか。
(5)R&S
R&Sとは、「リサーチ・アンド・セールス」の略で、弓削の造った言葉です。
これは見込み顧客企業にマーケティング調査に協力してもらい、意見を反映した試作品などもつくり、最後には購入してもらおう、というものです。
最初に関わったのは、ある医療機器メーカーでした。
その医療機器の操作、活用で第一人者と目される医師に協力をしてもらい、試作と試用を繰り返し、商品開発をしていくのです。
やがて、その医師は完成品を購入してくれます。
医師の世界はピラミッド型になっていますから、有力な「あの先生が導入した」となれば、下方に位置する医師たちもパタパタと一斉に導入してくれるのです。
あるいは、展示会などで出会った見込み客の企業に、「売り込みではなく調査です」というテイで連絡をとり、調査に協力をしてもらいながら人間関係をつくっていき、購入してもらうということもよくやっていました。
ということで、机上の調査に勤しむよりも、とにかく市場に投入してみることをオススメします。
縁もゆかりもない人が、お金を出して実際に買ってくれるものかどうかを試すのです。
どんな企業も調査に多大なカネと人と時間をかけていられるわけではありませんからね。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげ とおる)でした。
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