クラウドソーシングの発注の仕方
弓削のコラムでは、たびたびクラウドソーシングの活用をオススメしてきました。
しかし、あまりデザイン制作を発注しなれていない人や、クリエイターの実態に土地カンのない担当者さんですと、どう活用したらよいのわからないということも多いようです。
セミナーで活用のコツをお話しすると、熱心にメモを取られる方が大勢いらっしゃいます。
そこで本記事では、クラウドソーシングの利用の仕方とコツについて書きます。
クラウドソーシングには、大きなところでランサーズとクラウドワークスの2つがあります。
■ちゃんと仕事をしてもらえるの?
何年か前まで、こうしたサイトに登録しているのは仕事のない三流クリエイターか、プロになりたいけれどなれないアマチュアレベルの人たちばかりでした。
わかりやすくいえば、使えなかったのです。
ところが、いまではちゃんと仕事のできる人も登録しています。
クリエイターのなかには、大都市に住んでアクセク仕事をするより、田舎に住んでそこそこの仕事をこなしてのんびり暮らそう、という価値観の人が増えてきたことが、その背景にあるのです。
両サイトとも利用してきた感触でいいますと、ランサーズのほうがややレベルの高いクリエイターが登録しているような気がします。
ただ、両方に登録している人もいるでしょうし、案件のタイプによっても異なりますので、決定的な差ではありません。
結局は、「できる人」をどうやって選ぶか、見抜くかが問題となってきます。
後段で、その方法について書きましたので、最後までお読みください。
■価格は市中価格より安いの?
「市中価格」というのは、都心に事務所を構えて人も雇用している広告会社や制作プロダクションの請求金額のことです。
それらと比較して、クラウドソーシングの料金は安いのでしょうか。
答えは、安いです。
体感的には、3分の2から半額くらいではないでしょうか。
前項に書いた「ちゃんと仕事のできる人」も、その他のイマイチの人と似たような料金でも仕事を受けてくれるわけです。
ただ、提示金額に相場よりも1、2万円の上乗せをしますと、レベルの高いクリエイターの参加が増えることも事実ですね。
「では、相場の金額はいくらか」と疑問が出ることと思います。
それは、別の発注案件の提示金額を参考にしてください。
応募者や提案者の集まり人数も見てください。
私がここで、ネーミング1件なら3万円とか、ランディングページ1件なら4〜5万円などと、金額を書くことはよくないと思いますので。
ちなみに、コピーライター時代の私のカタログ1ページの料金は3〜4万円でした。
ダイレクトなら4万円、間に広告代理店が入ると3万円にする、という感じです。
これを、D通は、クライアント企業(大手企業)に1ページ6万円で売っていました。
■発注の仕方はどうするの? 〜選び方と絞り方
発注の体系はどちらも似ていますが、主にランサーズでの発注方法を中心に説明していきたいと思います。
主な発注の仕方は4通りです。
・コンペ式 実際に制作したものを提出してもらい選択する(作業が先)
・プロジェクト式 仕事内容と金額を提示して応募者を選び、発注する(作業はあと)
・求人募集式 求人票を掲載して募集する(同作業を継続依頼したい場合など)
・タスク式 単純な作業をしてくれた全員に料金を払う(アンケート回答など)
※ランサーズの依頼方法説明ページより
ものづくり企業がデザインを発注する場合(ロゴマークのデザインや、ネーミング、ウェブサイトの制作など)は、たいがいは最初の2つ、つまりプロジェクト式かコンペ式になりますので、それらについて詳しく説明します。
●コンペ式 発注のコツ
まず、実際に制作したものを応募してもらうコンペ式。
この競合形式に適しているのは、ロゴデザインや名刺デザイン、商品ネーミングなどです。
ワンアイデアで制作できる単品で、それほど作業時間がかからないものであれば、実制作をしてもらっても大きな負担にはなりません。
最終のアウトプットを見せてもらえれば、よいわるいの判断は容易に下すことができます。
ところで、ロゴマークはグラフィックデザイナーが制作するものですが、得意な人とそうでない人がいます。
カタログのデザインが得意ではないデザイナーというのはほぼいないと思いますが、ロゴデザインやパッケージデザインは、苦手な人が多いように感じます。
つまり10年以上のデザイナー経験があるにも関わらず苦手、という人がいるのです。
そうすると、あなたが依頼しているデザイナー氏は得意なのか、苦手なのか? という疑問が出てきますよね。
そこで、「得意な人と出会える」、そして「衆知を集められる」という2つの意味においてクラウドソーシングが有効だということがいえるのです。
まず、クラウドソーシングに登録デザイナーの数が多いということは、発注したい案件のデザインが得意な人がそのなかに存在する可能性が高い。
もう1点として、仮にすぐれたデザイナー1人に3案を提案してもらうより、玉石混交のデザイナー100人に合計100案を提案してもらったほうが、結局は質の高いものになる。
ここに、低価格とは別の、クラウドソーシングの価値があると考えています。
さて、ロゴマークに100案以上のアイデアが寄せられると、うれしい悲鳴となるかもしれません。
それだけ多方向からアプローチしたアイデアを得られても、先に提示した料金を採用者1人に支払うのみですから、効率的です。
まずは消去法で選んでいき、10〜15案ていどに絞ったら、拡大コピーをとって壁に貼りつけ、2〜3日眺めてみてください。
そうすると、あなたのコンセプトを明確化してくれるデザインがどれなのかが、だんだんはっきりしてくると思います。
そうやって1案に絞り込んだら、その案出者を採用とします。
そして、まことに失礼なのですが、他者のデザイン案からもアイデア要素を参考にさせていただき、それらを合体させて最終案をつくってもらうよう、採用決定者に調整を依頼します。
そうやってできた案は、アイデアもあり、完成度も高い、よいデザインとなることと思います。
●プロジェクト式 発注のコツ
もうひとつは、制作者を事前に選定し、そこから制作してもらうプロジェクト式。
この委託形式で発注する際のコツを書きます。
これは、手を挙げてくれたクリエイターをどうやって1人に絞り込むか、がキモです。
委託形式の場合は、20人くらいのクリエイターが名乗りを上げてくれるのが適正です。
ですので、5人しか連絡がなければ、提示価格が安すぎますし、50人も応募があったら価格が高すぎたということになります。
例として、ウェブサイトの制作を発注する場合で考えます。
まず、応募者全員の個人ページ(ランサーズ内にあります)を閲覧し、掲載されているポートフォリオ(過去の作品実績)を見ます。
ここで、「作品実績がじゅうぶんな数量」「自社と近い分野の実績がある」「デザイン傾向が自社のテイストと合う」などの基準から10人または7〜8人ていどに絞り込みます。
そして、制作上のカンタンな質問をメッセージで送ってみます。
「納期はどれくらいかかりそうですか?」、「こういう機能を持たせたいのですが、可能ですか?」など、なんでもよいのです。
そうすると、すぐには返信が返ってこない人がいます。
ビジネスの連絡はスピーディなほうがありがたいですから、48時間を過ぎても返信がない人は候補から外します。
次に、返信内容です。
デザイナーのなかには、コミュニケーションに問題のある人がいます。
質問の回答になっていない人、2つ質問しているのに1つにしか回答してこない人などは候補から外します。
先ざき、仕事のやりとりが思いやられますから。
そして、なかには質問にきちんと回答し、さらに「もし、こういうことになったら、これこれをしたほうがよいと思います」などのように、別の問題にも先回りしてアドバイスを書いてくれるような人がいます。
あなたが依頼をするのは、この人です。
そうやって絞り込めば、長く付き合いのできるお相手を見つけることができると思います。
ちなみに、弓削のウェブサイトもランサーズで見つけた人が制作してくれました。
この方も地方在住ですが、とてもセンスのよい、良心的なクリエイターですよ。
製造業のマーケティングコンサルタント、弓削 徹(ゆげとおる)でした。
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